唐詩選卷六 靜夜思 李白 ― 2009年10月07日
静夜思 李白
牀前看月光 牀前月光を看る
疑是地上霜 疑ふらくは是れ地上の霜かと
擧頭望山月 頭を挙げて山月を望み
低頭思故鄕 頭を低れて故郷を思ふ
【通釈】寝台の前に射し込む月の光を見る。
もしやこれは地上に降った霜か。
頭を上げて、山の端の月を眺めやり、
頭を垂れて、故郷を思いやる。
【補記】開元十九年(731)三十一歳、放浪の旅のさなか、安陸の小寿山に滞在した時の作。この作に限るわけではないが、月の光を霜になぞらえるといった《見立て》の趣向は平安時代の和歌に大きな影響を与えた。
【影響を受けた和歌の例】
朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪(坂上是則『古今集』)
ひとりぬる山鳥の尾のしだり尾に霜おきまよふ床の月かげ(藤原定家『新古今集』)
あふぎみる高嶺の月にふる郷の草葉の霜の色をしぞ思ふ(松平定信『三草集』)
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