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雲の記録200912212009年12月21日

2009年12月21日午後1時33分鎌倉氏由比が浜

再び相模湾上の積雲。鎌倉市由比が浜にて、午後一時半頃。沖には伊豆大島の島影が霞んでいた。

白氏文集卷十八 冬至夜2009年12月21日

冬至の夜     白居易

老去襟懷常濩落  老い去りて 襟懐(きんくわい)常に濩落(くわくらく)たり
病來鬚鬢轉蒼浪  病み(きた)りて 鬚鬢(しゆびん)(うた)蒼浪(さうらう)たり
心灰不及爐中火  心灰(しんくわい)爐中( ろ ちゆう)の火に及ばず
鬢雪多於砌下霜  鬢雪(びんせつ)砌下(せいか)の霜よりも多し
三峽南賓城最遠  三峡(さんけふ) 南鬢(なんびん) (しろ)最も遠し
一年冬至夜偏長  一年 冬至 (よる)(ひと)へに長し
今宵始覺房櫳冷  今宵(こんせう)初めて(おぼ)房櫳(ばうろう)の冷やかなるを
坐索寒衣托孟光  (そぞろ)寒衣(かんい)(もと)めて 孟光(まうくわう)(たの)

【通釈】年老いて、わが胸中は虚ろだ。
病み衰えて、あご髭もほお髭も真白だ。
灰のように燃え尽きた心は、炉の炭火にも及ばず、
雪のような鬢の白髪は、敷石の下の霜よりも多い。
三峡のうち、ここ忠州は長安の都から最も遠く、
一年のうち、冬至の今日は夜がこの上なく長い。
今宵初めて感じた、部屋の冷え冷えとしていることを。
じっとしたまま、冬着を請うて愚妻にすがるのだった。

【語釈】◇老去 年老いる。◇襟懐 胸のうち。◇濩落 空虚なさま。◇鬚鬢 鬚はひげ、特にあごひげ。鬢は頭の左右側面の髪、または頬ひげ。◇蒼浪 蒼白いさま。◇心灰 灰のように燃え尽きた心。◇鬢雪 雪のように白い鬢の毛。◇砌下霜 「砌」は軒下の石を敷いたところ。その石の前に置いた霜。◇三峽 長江の名高い三つの峡谷。◇南賓 忠州(重慶市忠県)の古名。◇房櫳 部屋。◇坐 いながらに。じっとしたまま。◇寒衣 寒い時に着る服。冬着。◇托 相手を頼みとしてその力に縋る。「でい」とする本もあり、この場合「ねだる」ほどの意になる。◇孟光 『蒙求』『後漢書』などに見える後漢の梁鴻の妻。貧しい隠者の賢妻の代名詞として、詩人は自身の妻をこう呼んだ。

【補記】冬至の夜、老いを嘆く。大江千里『句題和歌』に第三句・第四句・第六句を句題とする和歌が見える。また藤原基俊撰の『新撰朗詠集』巻上冬の「炉火」の部に第三・四句が採られている。

【影響を受けた和歌の例】
もの思ふ心は灰とくだくれど熱き(おき)にぞおよばざりける(大江千里『句題和歌』)
我が髪のみなしら雪と成りぬればおける霜にもおとらざりけり(同上)
ひととせに冬来ることは今ぞしる臥し起きすれば明かしがたさに(同上)