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菅家文草卷四 新蝉2010年07月06日

蝉

新蝉      菅原道真

新發一聲最上枝  新たに一声(ひとこゑ)を発す 最も上なる枝
莫言泥伏遂無時  言ふことかなれ (こひぢ)に伏して遂に時無しと
今年異例腸先斷  今年は(つね)よりも(こと)(はらわた)先づ()
不是蟬悲客意悲  これ蝉の悲しぶのみにあらず (かく)(こころ)も悲しぶなり

【通釈】いちばん高い梢で、蝉が初めて一声を発した。
言うな、土の中に埋もれ伏して、残りの時間は最早無いと。
今年は例年にも増して真っ先に断腸の思いがする。
悲しいのは蝉ではなく、旅人たる私の心が悲しんでいるのだ。

【語釈】◇不是蟬悲 「これ蝉の悲しぶにあらず 」と訓むのが本来であろうが、和漢朗詠集の古写本に「これ蝉の悲しぶのみにあらず」と訓むのに従う。◇客 旅人。左遷の身にあった自身を指す。

【補記】仁和四年(888)、讃岐に左遷されて三年目の作。和漢朗詠集巻上夏「蝉」の部に第三・四句が採られている。土御門院の御製は「不是蟬悲客意悲」の句題和歌。

【影響を受けた和歌の例】
夏ふかき森のうつせみねにたてて啼くこの暮は我さへぞ憂き(土御門院『土御門院御集』)
うつせみの世はかくこそと見るごとに先づ我が身こそ悲しかりけれ(木下幸文『亮々遺稿』)

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