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和漢朗詠集卷上 蘭蕙苑嵐摧紫後2010年10月28日

藤袴の花

花寒菊点叢(抄)  菅三品
花寒くして菊(くさむら)に点ず(抄)  菅原文時

蘭蕙苑嵐摧紫後  蘭蕙苑(らんけいゑん)の嵐の(むらさき)(くだ)きて(のち)
蓬莱洞月照霜中  蓬莱洞(ほうらいとう)の月の霜を照らす(うち)

【通釈】香草園の紫の花を嵐が摧き去ったのち、
禁裏の庭を霜のような月光が照らす中、ただ菊だけが草叢に咲いている。

【語釈】◇蘭蕙 蘭・蕙は共に香草の類。「紫」とあるので藤袴であろう。◇蓬莱洞 蓬莱宮(仙人の住む宮殿)に同じ。ここは宮廷のこと。

【補記】和漢朗詠集巻上秋「菊」。題は『江談抄』より。同書には全詩を載せる(下記参照)。天暦七年(953)十月五日の残菊宴に見える詩題(九条殿記)。和歌では「蘭」の題詠で「蘭蕙苑嵐摧紫後」を踏まえた歌が散見される。

【影響を受けた和歌の例】
ふぢばかま嵐たちぬる色よりもくだけて物は我ぞ悲しき(藤原俊成『長秋詠藻』)
ふぢばかま月の枕に匂ふなり夢は旅寝の露にくだけて(藤原家隆『壬二集』)
ふぢばかま嵐のくだく紫にまた白菊の色やならはん(藤原定家『拾遺愚草員外』)
ふぢばかま嵐になびく末葉より紫くだく野辺の夕露(藤原忠良『千五百番歌合』)
紫をくだく嵐はまだ立たで野をさかりなる藤袴かな(藤原為家『新撰六帖』)
吹きしをる嵐にくだく紫の色むつまじき藤袴かな(藤原為家『為家五社百首』)
紫のくだくるほどに藤袴野風やあらく吹きしをるらん(『安嘉門院四条五百首』)
藤袴ほころびてこそ紫の色にくだくる露も見えけれ(三条西実隆『雪玉集』)

【原詩全文】
蘭蕙苑嵐摧紫後 蓬莱洞月照霜中 依香徳暖鑪煙散 影爲恩深□砌融

酔芙蓉:草木の記録201010272010年10月28日

酔芙蓉 庭にて

昨夕、一つだけ咲き残っていた酔芙蓉。日が短くなったためか、夕方になっても花は紅くなりきらない。

更新情報:皇后宮大輔百首2010年10月28日

定家全釈に皇后宮大輔百首をアップしました。当ブログに連載していたのをまとめ、少し手を加えたものです。