白氏文集卷五十一 題故元少尹集後二首 ― 2010年11月03日

故元少尹(げんせうゐん)が集の後(あと)に題す二首 白居易

黄壤詎知我  黄壌(くわうじやう)詎(なん)ぞ我を知らん
白頭徒憶君  白頭(はくとう)徒(いたづら)に君を憶(おも)ふ
唯將老年淚  唯(ただ)老年の涙を将(もつ)て
一灑故人文  一(いつ)に故人の文(ぶん)に灑(そそ)く

 其二
遺文三十軸  遺文(ゐぶん)三十軸(さんじふぢく)
軸軸金玉聲  軸軸(ぢくぢく)に金玉(きんぎよく)の声あり
龍門原上土  龍門(りようもん)原上(げんじやう)の土(つち)
埋骨不埋名  骨(ほね)を埋(うづ)むれども名を埋めず

【通釈】黄泉にいる君がどうしてこの世の私を知ろう。
しかし白髪頭の老人はむやみと君を懐かしんでいる。
ただ年老いてもろくなった涙を、
すべて亡き君の文の上にそそいでいる。

其の二
君の遺した書は三十巻。
巻毎に無上の響きを伝える。
君は龍門の原野の土に
骨を埋めたが、名を埋めはしなかった。

【語釈】◇黄壤 冥土。黄泉。◇龍門 山西・陝西両省の境、黄河中流の難所。

【補記】元居敬(763~822)の集の末尾に記した詩二首。元居敬(宗簡)は白居易より九歳年上の旧友で、度々詩を贈答した。和漢朗詠集巻下「文詞 付 遺文」に「其二」全詩が引かれ、特に第三・四句は軍記物や謡曲に多く引用されている。

【影響を受けた和歌の例】
  貫之が集を借りて、返すとてよみ侍ける 恵慶法師
ひと巻に千々(ちぢ)の黄金(こがね)をこめたれば人こそなけれ声はのこれり(『後拾遺集』)
  紀時文(ときふみ)がもとにつかはしける 清原元輔
かへしけむ昔の人のたまづさを聞きてぞそそく老の涙は(『後拾遺集』)
  遺文三十軸軸軸金玉声
水ぐきのあとは昔に変はらねば見るに涙のかわく間ぞなき(藤原隆房『朗詠百首』)

櫨:草木の記録20101103 ― 2010年11月03日


ハゼ 鎌倉市二階堂にて

ハゼ 鎌倉市二階堂にて

早朝裏山に登ると櫨の木が随分色づいていた。ここいらは何故か櫨(植物図鑑によればリュウキュウハゼ)の木が多い。下は道端に生えていた櫨の幼木。

櫨の幼木 鎌倉市二階堂にて