佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』京都附近3 銀閣寺~志賀山越 ― 2015年03月03日
銀閣寺
京都市の東北にあり。
松かぜや茶煙禅榻風流は国に一人の東山殿
すがすがし青葉あらしに送られて菜花咲けるあぜ道をゆく
白河
京都市の東北の山麓にある村。
けさ見れば汀のこほり埋もれて雪のなかゆく白川の水
もえわたる庭の水草もあらはれて烟ながるる白河の水
巌きる槌のひびきに花ちりて青葉になりぬしら川のおく
京へ売る畑の蝦夷菊花さきて蝶むつれとぶしらかはの里
いにしへは三千の大衆かよひけむ白川口の春霞かな
志賀山越
京都市より東山を越えて近江国にいづる山路。
志賀の山花に越ゆれば古への人も逢ふやとおもほゆるかな
日ぐらしに越えはつべくもおもほえず花かげ多し志賀の山道
聞えずばなほ声高に道とはむこなたにゆくや志賀の山越
かへるさは志賀の山ごえ暮はてゝきらゝの峰に鹿ぞ鳴くなる
朝風にうばらかをりて郭公鳴くや卯月の志賀の山越
あゆみおそきつぼ装束の人ふたり志賀の山道花吹雪する
補録
白河
白河のしらずともいはじ底きよみながれて世々にすまむと思へば
よろづ代のためしと見ゆる花の色をうつしとどめよ白川の水
白川の春の木ずゑを見わたせば松こそ花のたえまなりけれ
忘れめや都のたぎつ白河の名にふりつみし雪の明ぼの
ながれてのよにもかくこそ秋の月すみて久しき白河のみづ
里人は巌切り落す白河の奧に聞ゆるさをしかの声
いはほきる音もしめりて春雨のふる日しづけき白川の里
志賀山越
山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり
志賀の山越えにて、石井のもとにて物いひける人の別れける折によめる
むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな
春風の花のふぶきにうづもれて行きもやられぬ志賀の山越え
袖の雪空吹く風もひとつにて花ににほへる志賀の山越え
峰の雲ふもとの雪にうつろひて花をぞたどる志賀の山越え
にほひくる風のたよりをしをりにて花に越えゆく志賀の山道
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