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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』京都附近13 恭仁京址~月の瀬2015年03月12日

早春の泉川(木津川)

恭仁くに京址

加茂駅より木津駅に至る間木津川に臨める一帯の地。泉川は木津川の古名にして、鹿背山みかの原等みな此地にあり。

田辺福麿

鹿背かせの山木立を繁み朝さらず来鳴きとよもす鶯の声

みかの原ふたぎの野べを清みこそ大宮所定めけらしも

井上文雄

夏衣かせ山さむきさみだれの恭仁くにのみやこになくほとゝぎす

川田順

ふるさとの恭仁の山田の稲にすがり夏晩れゆけば蛍は飛ばず

笠置、月の瀬は奈良線の木津駅より関西本線によりて東すべし。

笠置山

笠置駅の傍。木津川に臨めり。元弘の古戦場。

後醍醐天皇

さしてゆく笠置の山をいでしよりあめが下にはかくれがもなし

藤原藤房

いかにせむ頼む蔭とてたちよればなほ袖ぬらす松の下露

加納諸平

笠置山あすの時雨をさきだてゝみだるゝくもに嵐ふくなり

川田順

笠置山夜討が攀ぢしからめ手の岩かげさむき蔦紅葉かな

朝場重三

水に臨む南笠置の温泉のやどのまひる寂しき山ふぢの花

中原竹鳳

はら〳〵と独活の枯れ葉に霙する南笠置の春のさびしさ

月の瀬

上野又は島が原より入るべし。

原三渓

久方の月の瀬人は嶺にすみて天の原にも梅をうゑけり

高木真藤

月の夜を月の瀬山に宿かりてにほひこぼるゝ花の影ふむ

和田洋夫

小車のつなひく犬が喘ぎのぼる月の瀬山路うめの花ふみて

補録

恭仁京址

活道いくぢの岡に登り、一株の松のもとに集ひて宴する歌

市原王

一つ松幾代か経ぬる吹く風の声の清きは年深みかも

よみ人知らず

都出でて今日みかの原いづみ川かは風さむし衣かせ山

泉川

(木津川の古称。)

田辺福麿

狛山に鳴くほととぎす泉河渡りを遠みここに通はず

藤原兼輔

みかの原分きて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ

藤原仲実

泉川水の水曲みわたふし漬けにしば間のこほる冬は来にけり

藤原定家

泉川かは波きよくさす棹のうたかた夏をおのれちつつ

時わかぬ波さへ色にいづみ川ははその森に嵐ふくらし

藤原為家

波の花こほりのひまをいづみ川けふみかの原春たちにけり

宗尊親王

泉川かは風寒し今よりや恭仁の都は衣うつらむ

三条西実隆

ほのかにも山より月のいづみ川ひかりぞ四方にわきて流るる

下河辺長流

泉川水のすずしさたちこめて今日より夏の衣かせ山

歌枕紀行「泉川・瓶原」へ

笠置山

藤原為忠

あかつきの鐘にかたぶく月影はかさぎの山に入りかかりけり

藤原俊成

五月雨は水上まさる泉川かさぎの山も雲がくれつつ

藤原定家

散らすなよ笠置の山の桜花おほふばかりの袖ならずとも

月の瀬

(水垣注:「月の瀬」は今月ヶ瀬と称し、この地名は奈良市に属するが、関西本線の月ヶ瀬口駅は京都府相楽郡にある。名高い梅林・梅渓は京都・奈良・三重の三府県に及ぶ。)

樋口一葉

さらばとて立ち出でがたし月の瀬のうめのたよりは告げて来つれど

(京都附近おわり)

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