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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大和紀伊方面19 熊野・由良の門2015年04月24日

熊野古道

熊野

紀州南部の称。熊野神社あり。

加納諸平

がつがけぶりふきけむ跡ならし椿のまき葉霜に氷れり

山賤がもちひにせむと木実このみつきひたす小川を又や渡らむ

鯨とるくま野の舟の八十やそつゞき花も紅葉も浦にこそあれ

竹田寅三

紀の山の冬暖かし夕さればきり岸の上に松虫のなく

すがすがし奥の熊野の広前の黒き小石の朝じめりかな

奥村岸子

三熊野は野べも山べも風かをる蜜柑花咲く春のあけぼの

熊野新宮

熊野川口にあり。

与謝野寛

明るくも材木船のならびたる熊野の秋の川口の色

石榑千亦

木の国の木の都なる川口の鋸屑おがくづ道の物柔かさ

瀞八丁どろはつちやう

熊野灘にそゝぐ北山川の一部。

竹田寅三

天つ星またゝき寒し山彦のほかに声なき岩かげにして

由良の門

紀淡海峡をいふ。

曾禰好忠

ゆらのとを渡る船人梶を絶え行も知らぬ恋の道かな

石榑千亦

紀の潮と淡路の潮と戦へる迫門を船ゆくかしぎながらに

補録

音無

(熊野本宮大社前で熊野川に合流する川。附近を「音無の里」と言った。)

よみ人知らず

恋ひわびぬをだに泣かむ声たてていづこなるらむ音無の里

清原元輔

音無の川とぞつひにながれける言はで物おもふ人の涙は

和泉式部

氷みな水といふ水はとぢつれば冬はいづくも音無の里

後鳥羽院

はるばるとさがしき峰を分けすぎて音無川をけふ見つるかな

熊野

柿本人麻呂

み熊野の浦の浜木綿百重なる心は思へどただにあはぬかも

屏風にみ熊野の形かきたる所
平兼盛

さしながら人の心をみ熊野の浦の浜木綿いくへなるらむ

藤原定家

ちはやぶる熊野の宮のなぎの葉をかはらぬ千世のためしにぞ折る

藤原良経

まれらなる跡をたづねし熊野山見し昔よりたのみそめてき

熊野の本宮やけて、年のうちに遷宮侍りしにまゐりて

後鳥羽院

契りあればうれしきかかる折にあひぬ忘るな神も行末の空

熊野川くだす早瀬のみなれ棹さすがみなれぬ波の通ひ路

正徹

熊野路や雪のうちにもわきかへる湯の峰かすむ冬の山風

加藤千蔭

わたの原夕浪黒く立ち来めり熊野の沖に鯨寄るころ

伴林光平

雲を踏み嵐をぢて御熊野の果無し山の果も見しかな

花のいはや

本居宣長

木の国や花のいはやに引縄の長くたえせぬ里の神わざ

加納諸平

神無月春ごこちにもなれるかな花の岩屋に花祭りして

有馬の海浪のゆふ花折りかけて神をまつらぬ時も日もなし

(水垣注:有馬の海は三重県熊野市有馬町あたりの海。熊野灘の一部。弓なりの海岸線が長く続き、七里御浜と称される。伊邪那美の墓所とも伝わる花の窟が近い。)

由良の門

作者未詳

妹がため玉をひりふと紀の国の由良の岬にこの日暮らしつ

藤原長方

紀の国や由良の湊に拾ふてふたまさかにだに逢ひ見てしがな

藤原良経

かぢをたえ由良の湊による舟のたよりもしらぬ沖つ潮風