佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大阪神戸附近7 浅沢・遠里小野 ― 2015年05月07日
補録
浅沢
住吉神社の近くに「浅沢小野」と呼ばれる野があり、また「浅沢沼」と呼ばれる沼があった。杜若と忘れ水の名所。住吉区上住吉に住吉大社の末社浅澤社がある。
住吉の浅沢小野のかきつはた衣に摺り付け着む日知らずも
住吉の浅沢小野の忘れ水たえだえならで逢ふよしもがな
五月雨に浅沢沼の花かつみかつ見るままに隠れゆくかな
かきつばた浅沢沼のぬま水に影をならべて咲きわたるかな
風吹けば浅沢小野の花薄ひとつにつづく沖つ白波
春の野に若菜摘まむときて見れば浅沢水はいまだ氷れり
浅沢の水のゆくへも知られけりひとすぢ白き月のひかりに
遠里小野
大阪市住吉区から堺市にかけての丘陵地。大阪府住吉区と堺市堺区に「遠里小野」の地名が残るが、いずれも現在は市街地である。萩の名所とされた。
住吉の遠里小野の真榛もち摺れる衣の盛り過ぎゆく
住吉の松のうれよりひびき来て遠里小野に秋風ぞふく
咲きにけり君がみるべき行末は遠里小野の秋萩の花
真萩ちる遠里小野の秋風に花ずりごろも今やうつらん
誰かまたここにとひこんゆく道もとほざと小野の花を尋ねて
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