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新刊のお知らせ 祇園三女歌集 蓮月式部二女和歌集2015年05月08日

近世女流歌人の歌集二冊(電子書籍)を新たに出版しました。

『祇園三女歌集(補訂版・口語訳付)』
江戸時代中期、京都祇園社(八坂神社)の茶店で三代にわたって女将をつとめた祇園梶子・百合子・町子(池玉瀾)の歌を集めた『祇園三女歌集』(明治四十三年祇園風流刊)の電子書籍版です。 他本を参照して最小限の補訂を加え、また口語訳を附しました。訳を添えたのは、和歌のレトリックを極めて巧緻に駆使した歌があり、現代の読者には理解しづらいものが少なくないと思われるためです。

言うまでもなく江戸元禄頃は町人文化の頂点と言われる時代で、梶子などもその一翼を担う人でしょう。誰に教えられたわけでもなく、幼くして和歌を口吟みはじめ、やがて王朝和歌の骨法を会得した、やはり元禄という時代が生んだ天才と言うほかない人だと思います。家集『梶の葉』は新編国歌大観に収録されていますが、百合子の『小百合葉』と町子の『白芙蓉』はなかなか読む機会さえない現状ですので、古書を復刊した次第。

梶子百合子は千人万首に採っています。

もう一冊は『蓮月式部二女和歌集(補訂版・注釈付)』。
大正三年十二月に珍書会から刊行された『蓮月式部二女和歌集』(宮崎璋蔵校訂・発行)を電子書籍として復刊したものです。

「珍書会」なるものは、どうやら宮崎璋蔵(1859-1919)の個人出版だったようです。三昧道人の別号も持つ、歴史作家としても知られた人ですが、晩年、稀書・珍書の類を校訂して「賞奇楼叢書」と名づけ多数出版しました。上で触れた『梶の葉』『小百合葉』、山口素堂の『とくとくの句合』、妖怪狂歌の秀逸『百鬼夜狂』などなど。今ではどれも稀覯本です。

さて幕末の二大女流歌人、大田垣蓮月と高畠式部については説明するまでもないでしょう。二人の秀歌を部類し交互に並べるという面白い趣向の歌集に、蓮月の味わい深い一文「大仏のほとりに夏をむすびける折」を併載しています。
やはり諸書を参照して最小限の補訂を加え、また注(語釈)を添えました。蓮月・高畠式部の歌は平明なので口語訳するまでもないでしょうが、やはり掛詞・縁語といった修辞法は駆使されているので、最低限の語釈を附けたものです。
巻末には、原本が底本とした金屏堂蔵板本の画像(国立国会図書館提供)と翻刻を収めました。