佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大阪神戸附近11 四條畷~神崎 ― 2015年06月11日
写真は箕面の勝尾寺。写真ACフリー素材。
大阪市より東に向ひて片町線あり。
四条畷
とても世に長らへはせぬ花なれどをしくもあるかな飯盛の山
(水垣注:飯盛山には三好長慶が本拠とした城があった。大阪府大東市。)
風障へしそのくすの木の小枝さへなき数に入るあとの寒けさ
箕面
大阪の北方にあり。滝あり、紅葉あり。
白雲に風ふき起り乱れとぶ箕面のみねのもみぢ葉朽葉
神崎
古くは京都より西方にゆく水路はこの地を流るゝ神崎川によれり。江口神崎などの地名の世に聞えたるもこの故なり。
五月雨に茅原蘆原水越えてわたし場遠し神崎の里
三島江や霜もまだ乾ぬ芦の葉につのぐむほどの春風ぞふく
補録
箕面
みのお山雲かけつくる峰の庵は松のひびきも手まくらの下
苔ふかき箕面のおくの杉の戸にただ音するは鹿の音ばかり
柴の戸に明け暮れ懸かる白雲をいつ紫の色に見なさむ
神崎
一夜とて結び捨てにし神崎の夢のたたりぞいくよともなき
三島江
かつて河内平野を満たしていた湖のなごり。摂津国の歌枕。現在の大阪府高槻市の淀川沿岸にあたる。真薦・蘆などの名所で、遊里としても知られた。
三島江につのぐみわたる蘆の根のひとよのほどに春めきにけり
三島江の水鳥さわぐ夕暮に袖うちぬらし今ぞ過ぎゆく
夏ふかみ玉江にしげる蘆の葉のそよぐや船の通ふなるらむ
みごもりに蘆の若葉や萌えぬらむ玉江の沼をあさる春駒
三島江の波に棹さすたをやめの春の衣の色ぞうつろふ
葦辺ゆく鴨の羽風もさむき夜にまづ影こほる三島江の月
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