佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大阪神戸附近12 猪名野・有馬 ― 2015年06月12日
写真は有馬富士。兵庫県三田市。
神崎より福知山線によつて伊丹、有馬方面に向ふ。
猪名野
伊丹附近の原野をいふ。
有馬山ゐなの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
有馬
福知山線の三田駅より軽便鉄道あり。東海道線よりすれば六甲山の背後に当る。(水垣注:有馬温泉へは神戸電鉄有馬線有馬温泉駅下車。)
みぞれふり夜のふけゆけば有馬山出湯の室に人の音もせぬ
補録
猪名野
我妹子に猪名野は見せつ名次山角の松原いつか示さむ
しながどり猪名のふし原青山にならむ時にを色はかはらむ
おしなべて鹿の子まだらに見ゆるかな雪むらぎゆる猪名の笹原
もろともに猪名の笹原みち絶えてただ吹く風の音に聞けとや
へだてゆく猪名野の原の夕霧に宿ありとても誰かとふべき
春はまだ遠くやゆかぬ打ちわたす猪名のむら山薄霞せり
猪名の湊
猪名川(神崎川に合流)の河口の水門という。
うき寝する猪名の湊にきこゆなり鹿の音おろす峯の松風
さしのぼる猪名の湊の夕潮にひかりみちたる秋のよの月
有馬
しなが鳥猪名野を来れば有間山夕霧立ちぬ宿りはなくて
有馬富士ふもとの霧は海に似て波かときけば小野の松風
ありま山みね行く雲に風さえて霰おちくる猪名のささ原
とまるべきかたやいづこにありま山やどなき野べの夕暮の雨
ありま山仏の身よりいだす湯に清き悟りもなどかなからん
いで湯わく谷のかげ草まづもえて有馬山風春や立つらん
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