佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大阪神戸附近13 蘆屋 ― 2015年06月13日
写真は芦屋浜。背景は東神戸大橋と六甲山地。
これより東海道本線に還りて、大阪湾の北岸を神戸に向ふ。
蘆屋
蘆屋駅所在地。(水垣注:現在は「芦屋」と書く。)
いさり火の昔の光ほのみえて蘆屋の里に飛ぶ蛍哉
あしや潟海松拾ふ子にこととはん眉ひきたるや紀路の遠山
補録
蘆屋
水垣注:蘆屋(芦屋)は和歌では侘しげな旅泊地として詠まれることが多かった。「蘆屋」は蘆で編んだ粗末な仮小屋をも意味したからである。また業平がこの地で詠んだ歌(初出は伊勢物語)により蛍の名所ともされた。
葦の屋の菟原処女の奥つ城を行き来と見れば哭のみし泣かゆ
蘆の屋のなだの塩焼いとまなみ黄楊の小櫛もささず来にけり
晴るる夜の星か川辺の蛍かも我がすむかたに海人のたく火か
はるかなる芦屋の沖のうき寝にも夢路はちかき都なりけり
ながめやる心のはてぞなかりける芦屋の沖にすめる月影
芦の屋に蛍やまがふ海人やたく思ひも恋も夜はもえつつ
ほのぼのと我がすむかたは霧こめて芦屋の里に秋かぜぞ吹く
いつもかくさびしきものか津の国の芦屋の里の秋のゆふぐれ
芦屋潟波のいづくもあらはれて夕日にかへる沖のつり舟
立ちまがふ蘆屋の里の夕がすみ花に宿とふ行方のみかは
波のうへに月かたぶけば浦千鳥とぶかげうつる芦の屋の窓
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