千人万首メモ 宜野湾朝保 秋 ― 2015年08月13日
九月十三夜
めでそめし世も長月の月みればおくれたるこそ光なりけれ
「(秋の初めに)賞美し始めた時からも長い時が経った長月の月――その月を見ていると、遅くなった月こそが最も賞美される光なのだった」。
秋の真っ盛りである八月十五夜に対し、晩秋の月として賞美された九月十三夜を詠む。眺め眺めしてついに末を迎えた秋の月、名残惜しさがその光をひときわ美しくする。陰暦九月の異称「長月」の名を活かし、巧みに歌い上げている。朝保の大方の歌は、このように知巧に重きを置いたものなのであるが、これは情も籠った有心の秀詠であろう。結句は定家の「…秋こそ月の光なりけれ」(新勅撰集)を思わせる。
『沖縄集』より。なぜか『松風集』には漏れた歌。
秋歌余録
会友見月
まどゐして月にうたへる声きけば共にみちたる心なりけり
旅宿虫
夢路より行きて聞くこそあはれなれ吾がふるさとの松虫のこゑ
雨後紅葉
立ち出でて雨の晴間に見つるかなきのふは染めぬ嶺のもみぢ葉
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