佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線14 松江・宍道湖 ― 2016年08月27日
松江
中の海と宍道湖との間にあり。駅より北半里に松江城址あり。
出雲富士はつかにかかる雲を見て旅の夕べをさびしみにけり
宍道湖
松江駅の西十町にあり。周囲十一里半、碧雲湖の名あり。湖中、嫁が島あり。
朝ぼらけ碧の雲の湖とほく浪よりあくるながめ涼しも
湖に夜釣のともしうるむまで立ちてをあれど見るにあかなく
補録
松江
出雲なる松江の鱸秋風に姿を見せて立てるしら波
松江皆美館にやどる
佐佐木信綱
月夜ふけぬ八雲の文に聞きし音、松江大橋を渡りゆく音
橋多き松江の街をゆきにけり人力車夫とものを云ひつつ
あかあかと午後の日射すはそのむかし八雲住みたる家の塀かも
日本の人となるまでこの美しき国土を愛でしそのこころはも
宍道湖
みづうみの水のけぶりに啼きしきる千鳥よ城の春もおぼろに
夏来たる山の光りををちこちに青空ひろきみづうみの国
雨はれて二日照れどもひろびろと宍道の湖はいまだ濁れり
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