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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線14 松江・宍道湖2016年08月27日

宍道湖の夕暮

松江

中の海と宍道湖との間にあり。駅より北半里に松江城址あり。

藤井喜一

出雲富士はつかにかかる雲を見て旅の夕べをさびしみにけり

宍道湖

松江駅の西十町にあり。周囲十一里半、碧雲湖の名あり。湖中、嫁が島あり。

松平乗承のりつぐ

朝ぼらけみどりの雲のうみとほく浪よりあくるながめ涼しも

今井康子

湖に夜釣のともしうるむまで立ちてをあれど見るにあかなく

補録

松江

上田秋成

出雲なる松江のすずき秋風に姿を見せて立てるしら波

松江皆美館にやどる
佐佐木信綱

月夜ふけぬ八雲のふみに聞きし音、松江大橋を渡りゆく音

吉井勇

橋多き松江のまちをゆきにけり人力車夫じんりきしゃふとものを云ひつつ

あかあかと午後の日射すはそのむかし八雲住みたる家の塀かも

日本につぽんの人となるまでこのしき国土くぬちを愛でしそのこころはも

宍道湖

太田水穂

みづうみの水のけぶりに啼きしきる千鳥よ城の春もおぼろに

夏来たる山の光りををちこちに青空ひろきみづうみの国

斎藤茂吉

雨はれて二日照れどもひろびろと宍道しんじうみはいまだ濁れり

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線14 須賀・八重垣神社2016年08月29日

須我神社(youtube)

補録

須賀

島根県雲南市大東町に須賀の地名が残る。神話では、八俣の大蛇を退治して櫛名田姫を得た須佐之男命が新婚の宮を造り「八雲立つ出雲八重垣…」の歌を詠んだ地。なお八重垣神社はもと須賀の地にあったが、明治時代、松江の佐久佐神社と合祀され、いま松江市佐草の地に鎮座する。

須佐之男命

八雲やくも立つ 出雲いづも八重垣やへがき 妻籠つまごみに 八重垣作る その八重垣を

藤原良経

八雲立つ出雲八重垣けふまでも昔の跡は隔てざりけり

しきしまや大和言の葉たづぬれば神の御代よりいづも八重垣

正徹

世にこえて猶ぞさかえんことの葉を神のさだめし出雲八重垣

桜町院

わが心すがすがしてふ跡とめて今も八雲の道は汚さじ

平賀元義

妻籠に籠りし神の神代よりすがの熊野にたてる雲かも

千種有功

八重垣のむかしのままに霞むらし出雲の宮の春のあけぼの

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線15 加賀の潜戸・錦の浦2016年08月31日

加賀の潜戸

加賀の新潜戸

補録

加賀の潜戸くけど・錦の浦

島根県松江市北部。加賀の潜戸には、海の洞窟である新潜戸と、陸地寄りの(上陸できる)洞窟である旧潜戸がある。旧潜戸には水子の霊が集まるという賽の河原があり、供養のために積まれた数多くの石塔が立っている。錦の浦は同地の入江で、古歌に詠まれた歌枕。

 

錦の浦といふところにて
道命法師(後拾遺集)

名にたかき錦の浦をきてみればかづかぬ海人はすくなかりけり

宗尊親王

こきまずる柳桜もなかりけり錦の浦の春の明ぼの

細川幽斎

舟よする錦の浦の夕浪のたたむやかへる名残なるらん

新潜戸
木下利玄

潜戸のいはやいく世経ぬらむ今日もかも波うねり入り鳴りとよみゐし

旧潜戸

亡き子ろが夜きて積むとふ石の塔しめじめおほし窟の奥に

阿部正路

加賀の潜戸に至りしときにありありと地獄の中の吾の顔見ゆ