佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国1 鳴門海峡 ― 2016年11月08日
鳴門海峡
淡路島と四国の海峡。中に島ありて大鳴門、小鳴門に分る。(注:渦潮で名高い。鳴門観光港より観潮船が就航している。また海峡に架かる大鳴門橋に設けられた遊歩道「渦の道」からも渦潮を間近に眺めることができる。)
浪荒き阿波の鳴門は夏ながらこころの寒きところなりけり
うづ潮の鳴門の沖のむら千鳥おりたちかねて空になくなり
たぎちゆく阿波の鳴門の早潮に心地よく小舟乗せてけるかも
補録
大島の鳴門を過ぎて二夜を経し後、追ひて作れる歌
これやこの名に負ふ鳴門の渦潮に玉藻刈るとふ海人娘子ども
秋ふかく鳴門の海の早汐におちゆく月の淀む瀬もがな
わたつみの鳴門は竜のかどなれば潮も滝とおつるなりけり
見わたせば神も鳴門の夕立に雲たちめぐる淡路島山
夜さへに玉藻刈るべみ鳴門の海うづ潮白く月照りにけり
おほかたは暗き鳴門に帯ほどの月明りして潮ふくれゆく
海山にあまる光のあつまりて鳴門へおつる潮のはげしさ
斎藤茂吉全歌集シリーズを刊行中です ― 2016年11月08日
最初の方からと、最後の方からと、交互に出版しています。すなわち、第一歌集『赤光』の次に最後の第十七歌集『つきかげ』、その次は第二、第十六、そして第三、第十五…といった順番です。
最新刊は第四巻の『遠遊』です。
原則として、各歌集の初版を底本として本文を作成しています。岩波書店の斎藤茂吉全集は、茂吉死後に発見された新資料を増補したり、GHQの検閲により削除された歌を増補したりして、初版本からかなり大きな改変・改編が成されている歌集が多いのですが、このたびの「全歌集シリーズ」は、初版本を重視し、全集で増補された分は「補遺」として別に収録する、という方針でやっています。
著者自身によって大幅な改編がなされた『赤光』については、初版・改選版の両方を収録しています。
茂吉が自作について解説した『作歌四十年』より、各歌集の抄を附録とするなどしています。第一巻『赤光』には「赤光抄」、第二巻『あらたま』には「あらたま抄」、といった具合です。『作歌四十年』執筆後に出版された晩年の『白き山』では、収録歌についての述懐を含む文章「冬」「春」「夏」「秋」を附録としています。文庫本に付くのがならいの「解説」の代りといったところです。
続々刊行予定ですので、どうぞお楽しみに。
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