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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国16 金毘羅(金刀比羅宮)2016年12月18日

金刀比羅宮(うどん県旅ネット)

金刀比羅宮 桜馬場西詰銅鳥居

金毘羅こんぴら金刀比羅ことひらぐう

琴平駅、象頭ざうづ山の中腹にあり。(注:香川県仲多度郡琴平町。親しみを込めて「こんぴらさん」とも呼ばれる。元来は海上交通の守り神として崇敬された。参道の長い石段が有名。JR土讃線琴平駅、琴電琴平駅下車すぐ。)

間島磐雄

金刀比羅の祭につづき讃岐路は空うち時雨しぐれ神無月来る

新井洸

玉藻よし讃岐小富士はたなひらになでさすらまくしき山かも

加藤順三

石段にふぢの花ちる夕ぐれを船人、宮にいかり納むる

補録

中島哀浪

山の宮に日のくれのぼる石の段はてこそなけれ遠く来にけり

廻れば四国は讃州那珂なかこほり象頭山ざうづさん金毘羅大権現と謡ひしが来ぬ

石榑千亦

船をくだき人の命とる海にむかひをたけびし君が声の大きさ

斎藤茂吉

金毘羅の神います山晴れたるにあへぎて登り忽ちくだる

吉井勇

金刀比羅の宮はかしこし船びとが流し初穂はつほをささぐるもうべ

谷鼎

象頭山金比羅大権現と幼きより聞き馴れて名のいたく親しき

佐藤佐太郎

讃岐のくに金刀比羅宮にまうでたりゆく春の海わたり来りて

 

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国17 伊予の海2016年12月20日

愛媛県側瀬戸内海の衛星写真

愛媛県側瀬戸内海の衛星写真

補録

伊予の海

愛媛県は瀬戸内海の燧灘・伊予灘、九州との境をなす豊後水道などに接する。広島県にまたがる芸予諸島、山口県にまたがる防予諸島など、群島の眺望にも恵まれている。

与謝野寛

燧灘ひうちなだはるかに秋の沖はれて水脈みをわかれたり紺青こんじやうと白

与謝野晶子

海は海山はおのれの青をもて惑ふことなくつらなれる伊予

美くしき秋の木の葉の心地して島の浮べる伊予の海かな

 

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国18 岩城島2016年12月22日

岩城島 積善山山頂 Wikipediaより

補録

岩城いわぎ

広島県と愛媛県にまたがる芸予げいよ諸島に属する島。愛媛県越智郡上島町。因島・生口いくち島から船便がある。

 

いはきのしま
読人不知(夫木抄)

伊与の海のいはきの島はわれなれやあふ事かたき塩のみぞやく

若山牧水

ゆたゆたにはやく潮満てゆたゆたに酒さかづきにみちてあるほどに

(牧水が岩城島の島本陣三浦邸に宿った時の歌。)

吉井勇

牧水がむかしの酒のにほひして岩城の夜は寂しかりけり

 

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国19 大三島2016年12月24日

大三島薬師山

大崎上島より大三島を望む

補録

大三島おおみしま

愛媛県今治市(旧越智おち郡大三島町)。芸予げいよ諸島の最大の島。しまなみ海道の連絡橋によって本州・四国とつながっているが、今治港・忠海港(広島県竹原市)から船便もある。伊予一の宮、大山祇おおやまづみ神社がある。

 

範国朝臣に具して伊予国にまかりたりけるに、正月より三四月までいかにも雨の降らざりければ、苗代もえせで騷ぎければ、よろづに祈りけれどかなはで、たへがたかりければ、かみ能因を「歌よみて一宮にまゐらせていのれ」と申しければ、まゐりてよめる

能因法師(金葉集)

天の川なはしろ水にせきくだせ天降ります神ならば神

吉井勇

伊予一の宮ある島の大鳥居海にうつりていや白く見ゆ

香川末光すえみつ

たたなはる叢島のはてのひろき海金色にして冬の日暮るる

香川美人よしと

夕映の終りて島は昏れしかど海さむざむと波明りあり

(香川末光(1910-2003)・美人(1915-2008)は大三島出身の兄弟で歌人。郷里で農業に従事し、瀬戸内の風光を主題とした多くの歌を残す。参考サイト

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国21 来島海峡2016年12月26日

今治市糸山公園より来島海峡を望む

今治市糸山公園より来島海峡を望む(いよ観ネット

補録

来島くるしま海峡

芸予諸島最南の島である大島と四国本土との間にある海峡。来島海峡大橋が架かる。潮の流れが速いことで知られる。

 

吉井勇

来島の瀬戸もにはかに掻き曇り遠いかづちす春のゆふぐれ

佐藤佐太郎

ふく風のごとく寂しき渦潮の流れの音は島にきこゆる

香川末光

目の下の来島の瀬戸憩流けいりうに光移るは風過ぐるらし

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国20 伯方島2016年12月27日

空撮 今治市伯方町船折瀬戸・赤灯台

補録

伯方島はかたじま

芸予諸島の島。愛媛県今治市。しまなみ海道の連絡橋によって本州・四国と繋がっている。他島との海峡は潮の流れが速く、ことに船折ふなおり瀬戸・鼻栗はなぐり瀬戸は難所として知られる。

吉井勇

伯方島にわが船泊てぬさすらひのこころの港ここにもとめむ

おほ夕立ゆだちいまか来るらし向う島鵜島のあたり波立てる見ゆ

とどろとどろ渦の大潮鳴りどよみ船ゆきなやむ船折の瀬戸

(注:吉井勇は昭和十二年夏の二ヶ月程を伯方島で過し、多くの歌を詠んだ。)

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国22 今治2016年12月29日

今治の海(いよ観ネット)

今治市砂場より来島海峡方面を望む。いよ観ネットより

今治

伊予北方の港、燧洋ひうちなだに臨む。

真鍋教子

防風芽ぐむ浜にし立てば朝風はすがすがしくも我袖を吹く

補録

吉井勇

今治の朝発ち船にわが乗れば海も凪ぎたり島へいそがな

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国23 石鎚山2016年12月31日

石鎚山(いよ観ネット)

石鎚山(いよ観ネットより

補録

石鎚いしづち

愛媛県西条市と久万高原町の境に聳える山。西日本最高峰。万葉集に詠まれた「伊予の高嶺」(「道後温泉」の項、山部赤人の歌参照)は石鎚山を指す。JR予讃線の伊予西条駅より石鎚ロープウェイ前までバス便がある。

九条教実のりざね

道とほき伊予の高嶺をたづねても人の行方を我にしらせよ

積雪
細川頼之

よそまでも伊予の高嶺のあらはれて雲ゐはるかにつもるしら雪

明和三年九月伊予国松山の城をいでて三津といふ所より船出して

松平定静

舟出する末もはるけき海原や伊予の高嶺をあとに見なして

石榑いしくれ千亦ちまた

ちちにむかふいつくしさして船の上ゆいしづち山の朝すがた見る

五島茂

父のくに伊予の高嶺は四つの国統べてさやけし天雲のうへに

(注:五島茂は石榑千亦の子)