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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国14 飯野山2016年12月12日

飯野山(讃岐富士)

飯野いいの

坂出駅の北一里十町。讃岐富士の名あり。

武井大助

日は入りぬ讃岐小富士のなで肩のすらりと立てる其肩の辺に

補録

伝西行歌

讃岐にはこれをば富士といひの山あさげの煙たたぬ日はなし

大塚布見子

ふるさとは五月の霞遠からぬ讃岐の富士をもおぼろにしたり

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国15 多度津2016年12月14日

多度津港全景

多度津港全景(古い絵はがきより。多度津町立資料館蔵)

多度津たどつ

瀬戸内海に面する要港。(注:香川県仲多度郡多度津町。古代からの要港で、近世以後は金比羅詣りの上陸地として栄えた。港に面して桜の名所桃陵公園がある。JR多度津駅は予讃線の主要駅の一つであり土讃線の起点。)

 

間島磐雄

秋の日の多度津の浜にさびしくも別るる時に光る波かな

補録

香川進

しづかなる日輪われにわかき日の夢をいだきてうち海を越ゆ

桜の花散るとしもなく春深きふるさとの山は静かなるかな

(香川進は多度津出身の歌人。1998年、88歳にて歿。)

冬紅葉2016年12月14日

冬紅葉(鎌倉市二階堂)
日当たりが悪く、紅葉の遅れていた庭隅の楓が、枯れかけながらも色づいて、今朝の氷雨に鮮やかだった。

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国16 善通寺2016年12月16日

弘法大師像(善通寺)

善通寺境内の弘法大師像

善通寺

弘法大師の誕生地。善通寺駅の西十町にあり。(注:香川県善通寺市。JR土讃線善通寺駅より1km余。)

浄月

これぞこののりのまことの言の葉を伝へし人の古里の寺

補録

讃岐の善通寺の山にて、海の月を見て
西行

くもりなき山にて海の月見れば島ぞ氷のたえまなりける

善通寺の山に住み侍りしに、庵の前なりし松を見て

ひさにへて我がのちの世をとへよ松跡しのぶべき人もなき身ぞ

讃岐の善通寺にてよみ侍りける
僧正宋縁(新続古今集)

高野たかの山そのあかつきを契りきてここにもおなじ月やすむらん

与謝野寛

善通寺秋のゆふべにわが立つも大師わかくて踏みませる土

与謝野晶子

あきかぜや空海法師をさなくて見たる讃岐の碧瑠璃へきるりの空

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国16 金毘羅(金刀比羅宮)2016年12月18日

金刀比羅宮(うどん県旅ネット)

金刀比羅宮 桜馬場西詰銅鳥居

金毘羅こんぴら金刀比羅ことひらぐう

琴平駅、象頭ざうづ山の中腹にあり。(注:香川県仲多度郡琴平町。親しみを込めて「こんぴらさん」とも呼ばれる。元来は海上交通の守り神として崇敬された。参道の長い石段が有名。JR土讃線琴平駅、琴電琴平駅下車すぐ。)

間島磐雄

金刀比羅の祭につづき讃岐路は空うち時雨しぐれ神無月来る

新井洸

玉藻よし讃岐小富士はたなひらになでさすらまくしき山かも

加藤順三

石段にふぢの花ちる夕ぐれを船人、宮にいかり納むる

補録

中島哀浪

山の宮に日のくれのぼる石の段はてこそなけれ遠く来にけり

廻れば四国は讃州那珂なかこほり象頭山ざうづさん金毘羅大権現と謡ひしが来ぬ

石榑千亦

船をくだき人の命とる海にむかひをたけびし君が声の大きさ

斎藤茂吉

金毘羅の神います山晴れたるにあへぎて登り忽ちくだる

吉井勇

金刀比羅の宮はかしこし船びとが流し初穂はつほをささぐるもうべ

谷鼎

象頭山金比羅大権現と幼きより聞き馴れて名のいたく親しき

佐藤佐太郎

讃岐のくに金刀比羅宮にまうでたりゆく春の海わたり来りて

 

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国17 伊予の海2016年12月20日

愛媛県側瀬戸内海の衛星写真

愛媛県側瀬戸内海の衛星写真

補録

伊予の海

愛媛県は瀬戸内海の燧灘・伊予灘、九州との境をなす豊後水道などに接する。広島県にまたがる芸予諸島、山口県にまたがる防予諸島など、群島の眺望にも恵まれている。

与謝野寛

燧灘ひうちなだはるかに秋の沖はれて水脈みをわかれたり紺青こんじやうと白

与謝野晶子

海は海山はおのれの青をもて惑ふことなくつらなれる伊予

美くしき秋の木の葉の心地して島の浮べる伊予の海かな

 

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国18 岩城島2016年12月22日

岩城島 積善山山頂 Wikipediaより

補録

岩城いわぎ

広島県と愛媛県にまたがる芸予げいよ諸島に属する島。愛媛県越智郡上島町。因島・生口いくち島から船便がある。

 

いはきのしま
読人不知(夫木抄)

伊与の海のいはきの島はわれなれやあふ事かたき塩のみぞやく

若山牧水

ゆたゆたにはやく潮満てゆたゆたに酒さかづきにみちてあるほどに

(牧水が岩城島の島本陣三浦邸に宿った時の歌。)

吉井勇

牧水がむかしの酒のにほひして岩城の夜は寂しかりけり

 

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国19 大三島2016年12月24日

大三島薬師山

大崎上島より大三島を望む

補録

大三島おおみしま

愛媛県今治市(旧越智おち郡大三島町)。芸予げいよ諸島の最大の島。しまなみ海道の連絡橋によって本州・四国とつながっているが、今治港・忠海港(広島県竹原市)から船便もある。伊予一の宮、大山祇おおやまづみ神社がある。

 

範国朝臣に具して伊予国にまかりたりけるに、正月より三四月までいかにも雨の降らざりければ、苗代もえせで騷ぎければ、よろづに祈りけれどかなはで、たへがたかりければ、かみ能因を「歌よみて一宮にまゐらせていのれ」と申しければ、まゐりてよめる

能因法師(金葉集)

天の川なはしろ水にせきくだせ天降ります神ならば神

吉井勇

伊予一の宮ある島の大鳥居海にうつりていや白く見ゆ

香川末光すえみつ

たたなはる叢島のはてのひろき海金色にして冬の日暮るる

香川美人よしと

夕映の終りて島は昏れしかど海さむざむと波明りあり

(香川末光(1910-2003)・美人(1915-2008)は大三島出身の兄弟で歌人。郷里で農業に従事し、瀬戸内の風光を主題とした多くの歌を残す。参考サイト

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国21 来島海峡2016年12月26日

今治市糸山公園より来島海峡を望む

今治市糸山公園より来島海峡を望む(いよ観ネット

補録

来島くるしま海峡

芸予諸島最南の島である大島と四国本土との間にある海峡。来島海峡大橋が架かる。潮の流れが速いことで知られる。

 

吉井勇

来島の瀬戸もにはかに掻き曇り遠いかづちす春のゆふぐれ

佐藤佐太郎

ふく風のごとく寂しき渦潮の流れの音は島にきこゆる

香川末光

目の下の来島の瀬戸憩流けいりうに光移るは風過ぐるらし

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』四国20 伯方島2016年12月27日

空撮 今治市伯方町船折瀬戸・赤灯台

補録

伯方島はかたじま

芸予諸島の島。愛媛県今治市。しまなみ海道の連絡橋によって本州・四国と繋がっている。他島との海峡は潮の流れが速く、ことに船折ふなおり瀬戸・鼻栗はなぐり瀬戸は難所として知られる。

吉井勇

伯方島にわが船泊てぬさすらひのこころの港ここにもとめむ

おほ夕立ゆだちいまか来るらし向う島鵜島のあたり波立てる見ゆ

とどろとどろ渦の大潮鳴りどよみ船ゆきなやむ船折の瀬戸

(注:吉井勇は昭和十二年夏の二ヶ月程を伯方島で過し、多くの歌を詠んだ。)