佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州16 荒津 ― 2017年03月08日
博多湾と西公園付近(提供:福岡市 撮影者:Fumio Hashimoto)
補録
荒津
福岡市中央区荒津・西公園あたり。万葉集に「荒津の浜」「荒津の海」「荒津の崎」が詠まれている。近くに鴻臚館があり、大陸との交易の拠点であったと見られる。後世、その名から荒々しい海辺を示す歌枕となった。西公園には討幕に奔走した福岡藩士平野国臣の像がある。
問答歌
作者未詳(万葉集)
白栲の袖の別れを難みして荒津の浜に宿りするかも
草まくら旅行く君を荒津まで送りぞ来ぬる飽き足らねこそ
羇旅を悲しみ傷みて、各所心を陳べて作れる歌
荒津の海潮干潮満ち時はあれどいづれの時か我が恋ひざらむ
海辺望月作
土師稲足(万葉集)
神さぶる荒津の崎に寄する波間なくや妹に恋ひわたりなむ
夕立
笠間時朝
風さわぎ夕立しけり神さぶる荒津の崎によする白浪
ひがた
大隈言道
荒津の海汐引きぬらしわが里の空も干潟と見ゆる白雲
天保八年の春のはじめに
野村望東尼
さ夜中に寝覚めて聞けば荒津の海冬の名残の波の音ぞする
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