佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州51 耶馬渓 ― 2017年12月06日
耶馬渓
山国川の渓流十数里にわたる。中津より耶馬渓鉄道あり。(注:大分県中津市。耶馬渓鉄道は昭和五十年に廃線。現在はJP中津駅・豊後森駅よりバス便がある。)
耶馬の渓雲分け入ればながめあかず幾その人か筆捨の松
補録
耶馬渓にて
与謝野晶子
石多き山にしあれば楓など女めく木の哀れなるかな
山の石おもしろけれど皆知れるわれの心の形するのみ
豊国の山あひの雨あはれなる旅の心を白く打つなり
耶馬渓にて
会津八一
あしびき の やまくにがは の かはぎり に しぬぬに ぬれて わが ひとり ねし
よひ に きて あした ながむる むかつ を の こぬれ しづかに しぐれ ふる なり
巌腹の洞門を通ふ馬ひとつひなたに出でていななきにけり
(注:「巌腹の洞門」は「青の洞門」とも。耶馬渓の名勝競秀峰の山裾に掘られたトンネル。)
深耶馬の山群れこゆる鳥の羽音夕しぐれ空にひびきわたるも
(注:安東玉彦はもと大分市長。1990年没。)
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