佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州52 宇佐八幡宮 ― 2018年01月03日
宇佐八幡宮
宇佐駅より西南一里七町。軽便鉄道あり。亀山の頂に鎮座す。官幣大社。〔注:大分県宇佐市。八幡宮の総本社。八幡大神(応神天皇)・比売大神(宗像三女神)・神功皇后を祀る。宇佐八幡・宇佐神宮とも。JR日豊本線宇佐駅よりバス便がある。かつては宇佐八幡駅まで大分交通の宇佐参宮線が通じていたが、1965年に廃止された。〕
老木立しげれるかげの石だたみ踏みつつ行けば吾も尊し
身をすてて祈りし君の真心を今はた忍ぶ宇佐の御社
〔注:「君」は和気清麻呂であろう。勅使として宇佐神宮に派遣され、神託を得て道鏡の即位を阻んだ。なお作者は三井物産常務藤瀬政次郎の夫人で「心の花」同人。〕
補録
宇佐八幡詠(新古今集神祇歌)
西の海立つ白浪のうへにしてなに過ぐすらむ仮のこの世を
この歌は、称徳天皇の御時、和気清麿を宇佐宮にたてまつりたまひける時、託宣し給ひけるとなん
筑紫へとくやしく何に急ぎけむ数ならぬ身のうさや変はれる
うさの宮わがたつ杣のひじりをもはぐくむ袖の末ぞうれしき
わたのはら波路へだつる宇佐の宮ふかき誓ひは代々に変はらじ
尋ねきてあふげばたかし亀山や神の恵みの万代のかげ
太宰府の大弐の卿の参進をなほ待つ如し宇佐の呉橋
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州53 国東 ― 2018年01月06日
旧千燈寺跡(大分県国東市)
補録
国東
大分県北東部にある半島の名、また特に半島東部の地域を言う。自治体としては豊後高田市・国東市・杵築市・速見郡がある。古寺が多く仏教文化の遺跡に富む。宇佐駅から豊後豊岡駅まで、半島の付け根を横切るようにJR日豊本線が通じている。
山椿花咲きしだり荘厳す大き巌にゑれる此の磨崖仏
〔注:豊後高田市の富貴寺へ向かう途上、熊野磨崖仏を見ての詠か。「ゑれる」は「彫ってある」意。〕
春の鳥山のみ寺に声すなり白鳳仏のましますみ寺
こえて来し国東半島夕ぐれて海におちいる末端白し
いにしへの流転の民がいひけらく国のはてなるここは国東
〔注:国東市の黒津崎夢咲公園にこの歌を彫った碑がある。碑に付した解説によれば、昭和二十三年、安国寺跡に弥生時代の集落遺跡が発見され、取材に訪れた毎日新聞地方記者山本保氏(国東半島出身)が詠んだ由。〕
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州54 別府 ― 2018年01月10日
川瀬巴水画「別府温泉」
別府温泉
別府駅所在地。古来八湯の名あり。〔注:大分県別府市。古くからの温泉地で、『豊後国風土記』に「赤湯の泉」の記事があり、今言う「血の池地獄」のことであろうと言う。JR九州日豊本線の別府駅前から温泉街が広がる。〕
日のいでを鍪にふせて四極山いでゆの町は霧に眠れり
〔注:四極山は高崎山の旧称。兜のような形をしている。次項参照。〕
目もはろにうちひらけ見ゆ別府の海国東の山はほの霞みつつ
補録
遠つ国ゆ捕はれ来つる歎をも知らざるごとしわにの面わの
血の池の地獄のうへにひつたりとかぶさりて秋のさやけき青空
いかし ゆ の あふるる なか に もろあし を ゆたけく のべて もの おもひ も なし
〔注:「いかしゆ」は「厳し湯」、大量の湯。〕
やはらかき湯気に身を置く我もよしこよひおぼろの月影もよし
わたつ海の沖に火燃ゆる火の国に我あり誰そや思はれ人は
〔注:歌集『幻の華』冒頭歌。宮崎龍介との出逢いの場であった別府赤銅御殿の跡地に、この歌の碑が建てられている。〕
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