佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州88 歎きの杜 ― 2019年07月16日
補録
歎きの杜
霧島市隼人町の蛭子(蛭児)神社の境内にある森。イザナギ・イザナミ二神から生まれた蛭子が船で流されここに漂着したが、その船から枝葉が茂り森になったといい、蛭子の脚が立たなかったことを二神が歎いたことから「歎きの森」の名が付いたという(三国名勝図絵)。時鳥などの名所とされた。
ねぎ事をさのみ聞きけむ社こそはてはなげきの杜となるらめ
無き名たちて歎きける頃よめる
橘俊宗女(金葉集)
いかにせんなげきの杜はしげけれど木の間の月のかくれなきよを
神さぶるなげきの森の時鳥ひくしめ縄もなくなくや来し
寄杜恋を
藤原秀茂(新続古今集)
かれにけり人の心の秋風にはてはなげきの森のことのは
いつまでか変はらぬかげと頼みこしはてはなげきの杜の下草
花にあかぬなげきの杜はこれなれや嵐吹きたつけふの夕暮
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