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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州44 大村2017年08月10日

大村公園

大村公園 玖島城板敷き櫓と桜

補録

大村

長崎県大村市。多良山の西、大村湾の東に位置する。大村藩の城下町として発展し、廃藩置県により大村県が置かれたが、その後長崎県に統合された。JR九州大村線が通る。大村藩の居城であった玖島城の跡は大村公園として整備され、大村桜で名高い桜の名所。同所には藩祖とされる藤原純友を祀る大村神社もある。

 

里花
大隈言道

わがやどる竹の下道みち折れてむかへば花のおほむらの里

(「おほむら」に「多」の意を掛ける。大村の地名は他にも少なからずあり、この歌の「おほむらの里」が具体的にどこを指すのかは不明。)

東一雄

春の日の心おだしも海の緑さくらの並樹見つつ語れば

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州43 佐世保2017年08月07日

佐世保市 九十九島

展海峰より南九十九島を望む

佐世保

佐世保湾の奥に位す。明治二十七八年役、同三十七八年役に我が艦隊の根拠地となりしところ。(注:「役」はそれぞれ日清・日露戦争のこと。長崎県佐世保市。佐世保駅はJR佐世保線の終着駅。軍港・造船の町として知られるが、リアス式海岸の景観美に恵まれ、九十九島くじゆうくしまなどの観光名所がある。)

 

川田順

御艦みふね皆ふなよそひして時まてる佐世保の海の冬の夜の月

赤堀信成

遠く征く御軍艦みいくさぶねの朝びらき佐世保のみなと海もとどろに

補録

中島哀浪

きならす鐘のひびきのをどむらし真下の海の春の青潮

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州42 有明海(筑紫潟)2017年08月03日

有明海 佐賀県

大魚おおうお神社の海中鳥居。佐賀県藤津郡太良たら町。

補録

有明海

九州北西部にある内海。福岡・佐賀・長崎・熊本四県にまたがる広大な干潟をなす。南は島原湾・八代海(不知火海)、西は天草灘とつながる。旧名とされる「筑紫潟」は、九州地方の他の浅海にも用いられた名で、必ずしも有明海を指す固有名ではない。

 

立秋
大内政弘

都にはまだ夏なれや筑紫がた西さへけふぞ秋の初風

中島哀浪

筑紫潟あしの芽立ちのはつはつに牡蠣は産卵をはじめしならむ

一月初旬より二月初旬にかけ、九州の沿岸を一周せり

若山牧水

風たてば有明の海は大いなる白き瀬となるわが小蒸汽船よ

長沢美津

有明の海より空にふきあぐる風がきりゆく雲のさかまき

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州41 有田2017年08月01日

佐賀県有田町のトンバイ塀

有田町上有田地区。トンバイ塀――耐火煉瓦(トンバイ)の廃材や陶片などを赤土で塗り固めた塀――が続く。

有田

長崎本線の上有田駅所在地。有田焼の産地。元和年中帰化韓人金江参平、多久より移りて創むるところ。(注:佐賀県西部、西松浦郡有田町。上有田駅は現在は佐世保線の駅。)

 

北村幽渓

山のはざま一すぢ町に立つ煙とつ国までもなびくなりけり

補録

中島哀浪

しらたまの有田の陶にまむかへばこころはぎぬあはれ白珠しらたま

鹿児島寿蔵

の国の窯場かまばの山に梅雨どきのあらき風ふき雲くだりくる

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』目次2017年07月31日

はじめに
1 東海道線 2 京都附近 3 伊勢方面
4 大和紀伊方面 5 大阪神戸附近 6 山陽線
7 山陰線 8 四国 9 九州 10 中央線
11 信越線 12 北陸線 13 総武線 14 常盤線
15 東北線 16 磐越線、奥羽線 17 北海道及樺太
18 台湾 19 朝鮮及満洲 20 支那及印度 21 欧米及其他

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州40 呼子2017年07月30日

呼子港

補録

呼子よぶこ

佐賀県唐津市呼子町。玄界灘に面する海岸は七ツ釜をはじめ奇観が多い。港は古くから倭寇・捕鯨などの根拠地として栄えた。現在は烏賊漁で名高い。

 

中島哀浪

ひそやかに渡船場に来て売る人のあはびは鳴れり風呂敷のなかに

吉井 勇

風なきに呼子の瀬戸のうづ潮はとどろとどろと鳴りやまずけり

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州39 唐津2017年07月28日

唐津城と城内橋

唐津城(模擬天守)と城内橋

唐津からつ

松浦河口に跨り唐津湾頭に臨む。(注:佐賀県唐津市。近世初頭、松浦川河口近くに造られた唐津藩の城下町。現在は唐津市として、かつて東松浦郡に属した町村の大半を合併し広大な面積を有する。唐津焼で名高い。)

 

左右田翠松

唐津潟古きかまどを守りつつ煙つづくる老人あはれ

補録

斎藤茂吉

松浦河月あかくして人の世のかなしみさへも隠さふべしや

(注:唐津療養中の作。「松浦河」は唐津市の中心街あたりを流れて唐津湾に注ぐ川で、万葉集に詠まれた松浦川―今の玉島川―ではない。なおこの歌の碑が唐津城址にある。)

長沢美津

けぶるごと唐津の海のひらけゐて名護屋城跡をとざす白雲

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州38 松浦2017年07月24日

唐津城より松浦潟(唐津湾)を望む

唐津城より松浦潟(唐津湾)を望む

補録

松浦まつら(松浦潟)

松浦は肥前国松浦地方の古称。現在の佐賀県・長崎県の北部。「魏志」に見える末盧まつろ(ら)(末羅)国にあたるという。古代、松浦あがた、のち松浦郡が置かれた。松浦潟は唐津湾とその周辺の海。松浦の海、松浦の浦などとも称す。和歌では大陸との間を往き来する船の発着地として詠まれることが多く、松浦舟・もろこし舟がしばしば詠まれている。

 

松浦仙媛に和する歌
吉田宜(万葉集)

君を待つ松浦の浦の娘子らは常世の国の海人娘子かも

題しらず
慈円(新勅撰集)

霞しく松浦まつらの沖に漕ぎいでて唐土もろこしまでの春を見るかな

松浦山
藤原定家

たらちめやまだ唐土もろこしにまつら舟ことしも暮れぬ心づくしに

題しらず
後鳥羽院(風雅集)

松浦潟もろこしかけて見わたせばさかひは八重の霞なりけり

海月
小沢芦庵

まつら潟山なき西に行く月をはるかにひたす沖つ白なみ

上田秋成

松浦がたかよふ鯨のあと見れば天路あまぢにけぶる八重の汐風

海上帰雁
香川景樹

折しもあれもろこし舟につらなりて松浦の沖を帰る雁がね

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州37 領巾振山(鏡山・松浦山)2017年07月19日

領巾振ひれふり

虹の松原の背後に聳ゆ。鏡山といふ。(注:佐賀県唐津市の山。万葉集等には松浦まつら山とも称す。任那みまなへと出征する大伴狭手彦さでひこを、松浦佐用姫がこの山から領巾ひれを振って見送ったという。平坦な山頂には鏡山神社・佐用姫神社などを祀る。唐津湾・虹ノ松原などの眺望が素晴らしい。JR筑肥線虹ノ松原駅の南一キロほど。)

 

作者不詳(万葉集)

万代よろづよに語り継げとしこのたけ領巾ひれふりけらし松浦佐用媛まつらさよひめ

海原の沖行く船をかへれとか領巾ふれしけむ松浦佐用媛

補録

山上憶良(万葉集)

松浦県まつらがた佐用姫さよひめの子が領巾ひれ振りし山の名のみや聞きつつらむ

三島王、後に松浦佐用媛の歌に追和する歌(万葉集)

音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が領巾振りきとふ君松浦山

川田順

わがぢし領巾振山のいただきは雑草あらくさ枯れて稲荷のほこら

土屋文明

唐津の海領巾振山の空すみて立つ天の川今宵仰がむ