李賀集卷三 莫種樹2010年11月30日

樹を()うる(なか)れ  李賀

園中莫種樹  園中に樹を()うる(なか)
種樹四時愁  樹を()うれば四時(しじ)(うれ)
獨睡南牀月  独り南牀(なんしやう)の月に(ねむ)れば
今秋似去秋  今秋(こんしう)去秋(きよしう)に似たり

【通釈】 庭に樹を植えてはならない。
樹を植えれば四季つねに心は愁える。
独り南の窓辺に月を浴びて眠れば、
今年の秋も去年の秋にそっくりだ。

【補記】元和四年(809)、作者十九歳の作という。全唐詩巻三百二十九に所載。柳原安子の歌はおそらく偶然の一致であろうが、時代と国を隔てた詩人と歌人の心の交響の一例として挙げておきたい。

【作者】李賀(791~817)は中唐の詩人。字は長吉(ちようきつ)。河南省昌谷の人。唐帝室の後裔。早熟の天才であったが、科挙を拒まれ、昌谷に帰り二十七歳で病没した。

【影響を受けた和歌の例】
夕べ夕べ木の葉ふる音わびしきに紅葉する木は植ゑじとぞ思ふ(柳原安子)