新刊のお知らせ(折口信夫の本四冊)2016年04月23日

折口信夫(釈迢空)

先月から今月にかけ、四冊の電子書籍を新たに刊行しました。
いずれも折口信夫(釈迢空)の本です。

海やまのあひだ 初版本電子復刻

春のことぶれ 初版本電子復刻

水の上 初版本電子復刻

自歌自註 付 海やまのあひだ・春のことぶれ

画像をクリックすると、Amazonの商品ページへ移りますので、詳しくはそちらを御覧下さい。
今回特に力を入れたのは、折口信夫が自作短歌について註釈・解説を付けた『自歌自註』です。昔全集で読んでみて、歌と解説の位置が離れているため、いちいち歌を参照し直すのが煩わしく、非常に読みづらさを感じた本でした。電子書籍ではリンクという便利な機能がありますので、歌と解説本文とをリンクでつなぐことで、両者の間を自由に往き来できるように工夫してみました。
楽天Koboのリーディング・システムではこうした機能が十分生かせない設定になっており、かえって読みづらくなってしまう場合もあるので、今回はAmazonのみの販売となります。

釈迢空の歌集は初版本を全て電子復刻する予定です。どうぞ引き続きの刊行をお待ち下さい。

新刊のお知らせ 和漢朗詠集 伝藤原行成筆2016年02月26日

和漢朗詠集 伝藤原行成筆

電子書籍『和漢朗詠集 伝藤原行成筆』を刊行しましたのでお知らせ申し上げます。

いわゆる「粘葉本和漢朗詠集」の影印(モノクロ復写)と、佐佐木信綱による解説・釈文(リフロー型の電子テキスト)から成ります。

上の画像は「皇室の名宝」展カタログからスキャンした粘葉本の一面です。電子書籍では残念ながらモノクロ画像なのですが。

下は原本の『和漢朗詠集 行成卿真蹟』です(現在では「真蹟」と認められていないので、電子書籍では副題を変更しました)。太平洋戦争開戦直前の刊行で、藁半紙の安価な製本ながら、粘葉本を装幀もそのまま原寸大で再現しようとした、美しい造りです。

和漢朗詠集 伝藤原行成筆

下の画像をクリックするとAmazonの商品詳細ページに移動しますので、詳しくはそちらをご覧下さい。

楽天でも販売されています。下記リンクよりどうぞ。

和漢朗詠集 伝藤原行成筆【電子書籍】[ 藤原公任 ]

千人万首メモ 日下部高豊2016年02月04日

新年の神田明神

日下部高豊 くさかべたかとよ 宝永元年か~明和四(1704?-1767) 通称:今荘貞右衛門

寛保二年(1742)、賀茂真淵に入門。最初期の県門歌人の一人である。明和四年(1767)、六十四歳で死去(六十六歳とも)。生涯独身であったらしい。死後に源道別が編した家集『山の幸』(一名『高豊をぢ集』。続歌学全書第二編収録)がある。『八十浦之玉』には三首入集。

春の始のうた

梓弓春たつらしも武蔵野の小手こてさし原に霞たなびく(八十浦之玉)

「小手さし原」(小手指原)は武蔵国入間郡、今の埼玉県所沢市西部にあった野で、古戦場として名高い。「小手こてさし」の名は日本武尊が東征の際この地で籠手こてをかざしたことに由来するという。枕詞「梓弓」が効く所以である。このように戦への連想のはたらく地名が、おだやかな春の到来を言祝ぐ心をひときわ高めていると言えるだろう。
なお初二句は万葉集にもありそうな上代調であるが、実際には中世に始めて見えるもので、「梓弓はるたつらしももののふの矢野の神山かすみたなびく」(玉葉集・西園寺実兼)が初例のようである。

春興

千早ぶる神田かみたもりに春くれば朝ぎよめするうぐひすの声(山の幸)

「神田の杜」は神田明神であろう。天下に名を馳せる古社であるが、古歌に詠まれた例は他を知らない。因みに千代田区の「神田」の地名は、もと伊勢神宮の神田しんでんがあったことに由来するという。
「朝ぎよめ」は多く宮中の朝の清掃のこととして詠まれた(「殿守とのもりとものみやつこ心あらばこの春ばかり朝ぎよめすな」拾遺集・源公忠)。清らかな早朝の神社の気を、ひとしお浄めるように鳴く鶯の初音。

月多遠情

箱崎の松をならせる秋風に見しふるさとの月ぞもれくる(山の幸)

「箱崎」は筑前の歌枕。箱崎八幡宮はかつて美しい松林の中にあった。はるばる九州を旅する旅人の身になり、秋風が鳴らす松籟を背景として、故郷の月を思慕している。「木の間よりもりくる月の影見れば心づくしの秋は来にけり」(古今集・読人不知)も遠く偲ばれる。

 


 

余録

  社
さいくさやさゆりの花もとりかざりいつきぞ祭る神の御前みまへ

  月前雲
くまもなく照りそふよりは白雲に秋風そよぐ月のよろしさ

新刊のお知らせ 伴林光平全集 第三巻 歌学編2015年12月15日

Kindle・楽天より電子書籍を刊行しましたのでお知らせ申し上げます。下の画像をクリックすると商品説明ページに移動しますので、詳しくはそちらをご覧下さい。

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新刊のお知らせ 万葉集(岩波文庫旧版 新訂新訓本)2015年11月30日

Amazonのkindleストアと楽天Koboにて電子書籍『万葉集(岩波文庫旧版 新訂新訓本)』を出版しました。

上の画像は岩波文庫と電子書籍の頁を並べてみたものです。クリックすると拡大されます。

委しくは下の表紙画像をクリックし、Amazonの商品詳細ページをご覧下さい。

楽天へは下記よりどうぞ。

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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』目次2015年10月31日

1 東海道線 2 京都附近 3 伊勢方面
4 大和紀伊方面 5 大阪神戸附近 6 山陽線
7 山陰線 8 四国 9 九州 10 中央線
11 信越線 12 北陸線 13 総武線 14 常盤線
15 東北線 16 磐越線、奥羽線 17 北海道及樺太
18 台湾 19 朝鮮及満洲 20 支那及印度 21 欧米及其他

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陽線目次2015年10月23日

山陽線

須磨(一の谷) 舞子 明石 淡路島 瀬戸内海 飾磨 赤穂 閑谷 後楽園 久米のさら山 福山 鞆 尾道 広島 厳島 錦帯橋 山口 萩 下関(阿弥陀寺)

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陽線5 飾磨・赤穂2015年10月13日

書写山円教寺(兵庫県姫路市)

写真は書写山円教寺(兵庫県姫路市)。

飾磨しかま

姫路の南、播磨灘に臨む、播但線の起点。

作者不詳(万葉集)

わたつみの海にいでたる飾磨川絶えむの心わが思はなくに

赤穂

大石良雄等四十七士の故城。那波駅の南三里。

熊谷直好

夕日さす浜辺の薄わけゆけばやがて赤穂の里も見えけり

補録

印南野

播磨国印南郡の野。今の兵庫県加古川市から明石市にかけての丘陵地にあたる。「いなびの」とも言い、「稲日野」「稲美野」などとも書いた。聖武天皇行幸の地。安貴王の歌により柏の名所とされた。王朝和歌では「否み」に掛けて用いられることもある。

 

柿本朝臣人麻呂、筑紫の国に下る時に、海路にして作る歌(万葉集)

名ぐはしき印南いなみの海の沖つ波千重に隠りぬ大和島根は

安貴王(万葉集)

印南野いなみのの赤ら柏は時はあれど君をが思ふ時はさねなし

源重之

いなび野にむらむらたてる柏木の葉広になれる夏は来にけり

加古の島

加古川河口の三角州かという。

 

柿本朝臣人麻呂の羇旅の歌(万葉集)

稲日野いなびのも行き過ぎかてに思へれば心恋しき加古の島見ゆ

よみ人知らず(拾遺集)

かこの島松原ごしになくたづのあなながながし聞く人なしに

後鳥羽院(続古今集)

かこの島松原ごしに見わたせば有明の月にたづぞなくなる

高砂

播磨国の歌枕。今の兵庫県高砂市の加古川河口付近という。松・鹿の名所。また大江匡房の歌などにより桜の名所ともされた。但し元来は地名でなく単に高い山を指す語ともいい、また「高砂の」を「尾上」にかかる枕詞として用いたかと見られる例もある。

よみ人しらず(古今集)

かくしつつ世をやつくさむ高砂の尾上にたてる松ならなくに

藤原敏行(古今集)

秋萩の花さきにけり高砂の尾上の鹿は今やなくらむ

藤原興風(古今集)

誰をかも知る人にせむ高砂の松もむかしの友ならなくに

夏の夜、深養父が琴ひくをききて
藤原兼輔(後撰集)

みじか夜のふけゆくままに高砂の峰の松風吹くかとぞ聞く

よみ人知らず(拾遺集)

秋風のうち吹くごとに高砂の尾上の鹿のなかぬ日ぞなき

清原元輔(拾遺集)

高砂の松にすむ鶴冬くれば尾上の霜やおきまさるらむ

遥かに山桜を望むといふ心をよめる
大江匡房(後拾遺集)

高砂の尾上の桜さきにけり外山の霞たたずもあらなん

藤原顕輔(千載集)

高砂の尾上の松に吹く風のおとにのみやは聞きわたるべき

藤原定家

高砂の松と都にことづてよ尾上の桜いまさかりなり

藤原秀能(新古今集)

吹く風の色こそ見えね高砂の尾上の松に秋は来にけり

書写山

姫路市の山。山上に性空上人開創の円教寺がある。

 

性空上人のもとに詠みてつかはしける
和泉式部(拾遺集)

くらきよりくらき道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月

一品経を書写山におくるとて、そへて侍りける歌の中に

藤原俊成(続千載集)

種まきし心の水に月すみてひらけやすらん胸の蓮も

飾磨

飾磨川、飾磨の市、飾磨染め(かち染め)などが歌に詠まれた。飾磨川は今の船場川。姫路市で瀬戸内海に注ぐ。

藤原道経(詞花集)

わが恋はあひそめてこそまさりけれ飾磨のかちの色ならねども

藤原俊成(千載集)

恋をのみしかまの市立つ民の絶えぬ思ひに身をや替へてむ

細川幽斎

水上みなかみに幾むらさめか飾磨河にごりは海に出でて来にけり

釈教の歌とて
契沖

野べの露山の雫もしかま川海に出でてはかはらざりけり

改訂のお知らせとお詫び 『増補版拾遺愚草』2015年09月14日

『新校拾遺愚草』を増補改訂し、書名を『増補版拾遺愚草』に改めました。
正篇・員外に「員外之外」(冷泉為久・為臣編)の歌々を加えたものです。
但し「員外之外」は少なからず他人の作を誤って採録しており、また「鷹三百首」など明らかな後世の偽作も多く収めてあります。本書ではこれらを削除し、定家の真作である確度の高い歌のみを残しました。

最晩年の七十首「名号七字十題和歌」や、勅撰集に採られながら正篇にも員外にも漏れた歌、また実験的で特異な作風を見せる若年期の「雨中吟」収録歌などを増補し、定家の秀歌・主要作はこれによってほぼ網羅されたことと思います。

ところで私はうっかり見落としていたのですが、Kindleの電子書籍では、大幅な改訂があった場合、修正版の配信の対象にはならないという規則がありました。増補版のような大きな修正が成された場合は、改訂版としてでなく、別の本として新たに出版することが推奨されていたのです。すでに旧版の『新校拾遺愚草』を購入された方に、『増補版』をダウンロードして頂くことはできないというわけです。

すでに『増補版』は出版されてしまい、今更どうしようもありません。そこで、『新校拾遺愚草』購入者で『増補版』を必要とされる方には、同書のmobiファイル(希望される場合はepubファイルも可)を無料で進呈することに致しました。ご希望の方は、

mizukaki@j.email.ne.jp

宛て、その旨メールをお送り下さい。その際、旧版『新校…』のご購入日をお書き添え下さい(日付はAmazonのアカウントサービスの「コンテンツと端末の管理」でご確認できます)。折り返し、電子書籍のファイルを添付したメールをお送りします。

なお、『新校拾遺愚草』はDL-Marketでも販売していたのですが、先日、セキュリティ問題が発覚した(今尚調査中の模様)ことをきっかけに、やまとうたeブックスはDL-Marketからの撤退を決めました。DL-Marketにて購入された方にも同様の対応をさせて頂きますので、ご希望がありましたらどうぞご一報下さい。

ご購入者の方にはご迷惑をおかけします。今後はこのようなことのないよう注意致します。

佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陽線4 瀬戸内海2015年09月11日

瀬戸内海(来島海峡大橋を望む)

写真は夕暮の来島海峡。

瀬戸内海

賀茂真淵

播磨潟迫門せとの入日のすゑはれて空よりかへる沖のつりふね

菅沼斐雄

船とむる加古の港の石垣に夕汐みちて千鳥なくなり

熊谷直好

大島の瀬戸のなるとのみつ汐にみだれて浮ぶあまのつり舟

難波いでて武庫の泊の明方にこれより遠き舟路をぞおもふ

八田知紀

月清みねざめて見れば播磨潟むろのとまりに船ははてにき

野村望東尼

人げなく思ひし島のめぐりきて畑も出できぬ家も見えこん

時雨ふる軒の雫の音に似て舟の底うつさざ波の声

横山由清

あはと見し淡路の島も行く船の片帆がくれに早なりにけり

戸田宇八

送りては迎ふる八島八十千しま我船はやし吉備のうちうみ

与謝野寛

春の日の音戸の迫門せとにうつりたる赤土山の菜の花のいろ

釈迢空

速吸の門中にひとつあふものにくれなゐ丸の艪じるし見ゆ

北村幽渓

島を過ぎ島をむかへて高松の沖ゆく船のしづかなり秋

倉知常隆

くる島の瀬戸に寄せ来る大潮の砕けて煙る春の夜の月

武井大助

吉備の海宇野の浦わの朝凪に朝日匂へりさちある舟出

燧灘我こえくれば風寒み舟のまともに砕けちる浪

平沼呉岳

すなどりの村々も見ゆ畑も見ゆ住ままくほしき島ぞ多かる

暖かう春の日浴びて舟の上に午餉ひるげとりつつ島々を見る

鮫島近二

たそがれの瀬戸内海の夕凪に果敢なき恋を船は載せゆく

鷺友太郎

瀬戸の海なみ紫にあき晴れて島よりしまにしら帆きえゆく

能勢百合子

瀬戸の海舟してゆくや初秋の島よりひびくとほぎぬたかな

補録

瀬戸内海

柿本人麿

名ぐはしき印南いなみの海の沖つ波千重ちへに隠りぬ大和島根は

「印南の海」は今の播磨灘。

西行

播磨潟はりまがたなだのみ沖に漕ぎ出でてあたり思はぬ月をながめむ

平賀元義

吾妹子わぎもこ山北そともに置きてわがくれば浜風さむし山南かげともの海

山陽道を古く「かげとものみち」と言ったことから、瀬戸内海は「山南かげともの海」とも称された。

若山牧水

瀬戸の海や浪もろともにくろぐろとい群れてくだる春の大魚

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