白氏文集卷二十 樟亭雙櫻樹2011年05月21日

ユスラウメの花と実 みすま工房

樟亭(しやうてい)双桜樹(さうあうじゆ)   白居易

南館西軒兩樹櫻  南館(なんくわん)西軒(せいけん) 両樹(りやうじゆ)(あう)
春條長足夏陰成  春条(しゆんでう)長じ足りて夏陰(かいん)成る
素華朱實今雖盡  素華(そくわ) 朱実(しゆじつ) 今尽きたりと(いへど)
碧葉風來別有情  碧葉(へきえふ) 風来りて別に情有り

【通釈】樟亭駅の南館、西の軒先に桜桃(ゆすらうめ)の樹が双つある。
春に生えた枝はすっかり伸びて、夏の涼しい木陰を成している。
白い花も朱の実も、今は尽きてしまったけれども、
緑の葉が風にそよいで、格別の風情がある。

【語釈】◇櫻 ユスラウメ、または桜桃。花は白く、実は紅い。

【補記】抗州の富陽山麓、樟亭駅に宿った時に作った詩。「春条長夏陰成」を句題に大江千里が歌を詠んでいる。

【影響を受けた和歌の例】
木の芽もえ春さかえこし枝なれば夏の陰とぞ成りまさりける(大江千里『句題和歌』)