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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陽線4 瀬戸内海2015年09月11日

瀬戸内海(来島海峡大橋を望む)

写真は夕暮の来島海峡。

瀬戸内海

賀茂真淵

播磨潟迫門せとの入日のすゑはれて空よりかへる沖のつりふね

菅沼斐雄

船とむる加古の港の石垣に夕汐みちて千鳥なくなり

熊谷直好

大島の瀬戸のなるとのみつ汐にみだれて浮ぶあまのつり舟

難波いでて武庫の泊の明方にこれより遠き舟路をぞおもふ

八田知紀

月清みねざめて見れば播磨潟むろのとまりに船ははてにき

野村望東尼

人げなく思ひし島のめぐりきて畑も出できぬ家も見えこん

時雨ふる軒の雫の音に似て舟の底うつさざ波の声

横山由清

あはと見し淡路の島も行く船の片帆がくれに早なりにけり

戸田宇八

送りては迎ふる八島八十千しま我船はやし吉備のうちうみ

与謝野寛

春の日の音戸の迫門せとにうつりたる赤土山の菜の花のいろ

釈迢空

速吸の門中にひとつあふものにくれなゐ丸の艪じるし見ゆ

北村幽渓

島を過ぎ島をむかへて高松の沖ゆく船のしづかなり秋

倉知常隆

くる島の瀬戸に寄せ来る大潮の砕けて煙る春の夜の月

武井大助

吉備の海宇野の浦わの朝凪に朝日匂へりさちある舟出

燧灘我こえくれば風寒み舟のまともに砕けちる浪

平沼呉岳

すなどりの村々も見ゆ畑も見ゆ住ままくほしき島ぞ多かる

暖かう春の日浴びて舟の上に午餉ひるげとりつつ島々を見る

鮫島近二

たそがれの瀬戸内海の夕凪に果敢なき恋を船は載せゆく

鷺友太郎

瀬戸の海なみ紫にあき晴れて島よりしまにしら帆きえゆく

能勢百合子

瀬戸の海舟してゆくや初秋の島よりひびくとほぎぬたかな

補録

瀬戸内海

柿本人麿

名ぐはしき印南いなみの海の沖つ波千重ちへに隠りぬ大和島根は

「印南の海」は今の播磨灘。

西行

播磨潟はりまがたなだのみ沖に漕ぎ出でてあたり思はぬ月をながめむ

若山牧水

瀬戸の海や浪もろともにくろぐろとい群れてくだる春の大魚

柳原白蓮

秋の日や君が越え行く瀬戸の海の夕なぎ思ふ浜辺に立てば

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