蔦:草木の記録201010192010年10月19日


蔦 鎌倉市二階堂にて

アスファルトの路面にまで這い出た蔦の先端が紅葉していた。

蔦 鎌倉市二階堂にて


胡鴈一聲(和漢朗詠集巻下 猿)2010年10月19日

雁の群れ フリー素材「鳥」

和漢朗詠集巻下 猿

胡鴈一聲    胡雁(こがん)一声(いつせい)
秋破商客之夢  秋商客(しやうかく)の夢を破る
巴猿三叫    巴猿(はゑん)三叫(さんけう)
曉霑行人之裳  (あかつき)行人(かうじん)()(うるほ)

【通釈】北方から訪れた雁の啼く一声が、
秋、行商人の夢をさます。
巴峡の猿の叫ぶ三声が、
暁、旅人の裳を湿らせる。

【語釈】◇胡鴈 「胡」すなわち北方の異国から渡来する雁。◇巴猿 巴峡(長江の三峡の一つ)の猿。◇三叫 猿が三声叫ぶとするのは、『藝文類聚』などに見える「巴東三峽猨鳴悲 猨鳴三聲涙霑衣(巴東の三峡猨の鳴くこと悲し 猨鳴くこと三声にして涙衣を霑ほす)」に基づく。

【作者】江相公(がうしやうこう)、大江澄明(すみあきら)。生年未詳、天暦四年(950)没。朝綱の子。文章得業生となり、民部少輔などを歴任したが、父に先立って夭折した。

【補記】出典は『本朝文粋』の大江澄明「弁山水対策」。隆房の歌は「胡雁一声 秋破商客之夢」の句題和歌。

【影響を受けた和歌の例】
草枕かりがねのねに夢さめて露けさまさる旅衣かな(藤原忠成『為忠家初度百首』)
雁がねは越路にやどる旅人のまどろむ夢やおどろかすらん(藤原隆房『朗詠百首』)