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和漢朗詠集卷上 春色雨中盡 菅三品2010年03月25日

雨に濡れた桜 フォトライブラリー写真素材

春の色雨中に()く 菅原文時

花新開日初陽潤  花の新たに(ひら)くる日 初陽(そやう)(うる)へり
鳥老歸時薄暮陰  鳥の老いて帰る時 薄暮(はくぼ)(くも)れり

【通釈】桜が新たに開いた日は、春雨に濡れて、花に射す朝日もみずみずしくうるおっていた。
鶯の声も老いて谷に帰る今は、夕べの雨雲が垂れ込めて陰々と昏い。

【語釈】◇鳥老 春も暮れて鶯の声が老熟したことを言う。鶯を「鳥」としたのは前句の「花」との対偶のため。

【補記】和漢朗詠集の春の部の「雨」より。花が咲き始めた盛春の頃と、鳥が谷へ帰る暮春の頃を対比している。花・鳥、新・老、初陽・薄暮、と対偶。『日本紀略』によれば天延二年(974)三月二十八日、円融院主催の公宴で「春色雨中尽」の詩題が出されており、この時の作。原詩は散逸か。

【作者】菅原文時(899~981)。道真の孫。高視の子。天慶五年(942)、対策に及第し、内記・式部大輔などを経て、文章博士となる。従三位に叙せられ、菅三品の称がある。

【影響を受けた和歌の例】
夜の雨の露をのこせる花のうへににほひをそふる朝日かげかな(右衛門督『持明院殿御歌合』)
夜の露も光りをそへて朝日影まばゆきまでににほふ花かな(三条西実隆『雪玉集』)