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佩文齋詠物詩選 夏日臨江2010年07月08日

蓮の花


夏の日 江に臨む  梁武帝

夏潭蔭修竹  夏潭(かたん) 修竹(しうちく)(かげ)
高岸坐長楓  高岸(かうがん) 長楓(ちやうふう)に坐す
日落滄江靜  日落ちて滄江(さうかう)静かに
雲散遠山空  雲散じて遠山(えんざん)(むな)
鷺飛林外白  鷺飛びて林外(りんぐわい)に白く
蓮開水上紅  蓮開きて水上(すいじやう)(くれなゐ)なり
逍遙有余興  逍遥(せうえう)するに余興有り
悵望情不終  悵望(ちやうばう)するに(じよう)()きず

【通釈】夏の(ふち)は長い竹が蔭を落としている。
切り立った岸辺、丈高い(ふう)の木のもとに坐す。
日は落ちて青々とした大河は穏やかに、
雲は散って遠くの山々は虚ろだ。
鷺が林の外へ白々と飛び、
蓮が水の上に紅々(あかあか)と咲いている。
散策すれば感興は余るほどあり、
眺望すれば哀情の尽きることがない。

【語釈】◇修竹 「修」は「脩」に通じ、長い竹の意。◇滄江 青々とした河。「江」は長江。

【補記】夏の日、長江に臨んで作ったという五言古詩。『古詩三百首』などは作者を隋煬帝(楊広)とする。大江千里の歌は「蓮開水上紅」の句題和歌。

【作者】梁武帝、蕭衍(しようえん)。南朝梁の初代皇帝。464年~549年。雍州(湖北省襄陽)刺史であった時、南斉に兵を挙げ、天監元年(502)帝位に即いて梁朝を起こした。

【影響を受けた和歌の例】
秋近く蓮ひらくる水の上は紅ふかく色ぞみえける(大江千里『句題和歌』)
夕立の雲間の日かげ晴れそめて山のこなたをわたる白鷺(藤原定家『玉葉集』)