白氏文集卷十四 秋思 ― 2010年11月15日
病眠夜少夢
閒立秋多思
寂寞餘雨晴
蕭條早寒至
鳥棲紅葉樹 鳥は
月照靑苔地 月は
何況鏡中年 何ぞ
又過三十二
【通釈】病がちの夜の眠りは夢みることも少なく、
いつの間にかひっそりと残り雨はやみ、
わびしくも初冬の薄ら寒さが訪れる。
鳥は紅葉の残る樹を選んで棲み、
月は青い苔に覆われた地を冷え冷えと照らしている。
まして言うまい、鏡に映った私の歳、
白髪が交じり始める三十二を過ぎたことなど。
【語釈】◇閒立 安らかに立つ。◇三十二 白髪混じりの毛髪になるとされた年。潘岳の『秋興賦并序』に「晉十有四年、余春秋三十有二、始見二毛」とある。
【補記】実際に白居易三十二歳の作とすれば、貞元十九年(803)の作。試判抜萃科に及第し、校書郎を授けられて長安常楽里に仮寓していた頃である。「鳥棲紅葉樹」を句題に千里が、「月照青苔地」を句題に実隆が歌を詠んでいる。
【影響を受けた和歌の例】
秋すぎば散りなむものを啼く鳥のなど紅葉ばの枝にしもすむ(大江千里『句題和歌』)
山風の雲こそあらめ苔のうへの塵もくもらず宿る月かな(三条西実隆『雪玉集』)
(2010年11月16日・21日加筆訂正)
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