佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陽線2 舞子・明石 ― 2015年07月13日
写真は夕暮の明石海峡。
舞子
駅は松林の中にあり。
春の海かもめが遊ぶ白帆ゆく舞子の浜は風ゆるやかに
舞子より明石にと行く小車にしたがひ走る淡路島かな
明石
明石海峡に臨む、人丸神社あり。
天ざかる鄙の長路ゆ恋ひ来れば明石の門より大和洲見ゆ
ほのぼのと明石の浦の朝霧に島がくれゆく船をしぞ思ふ
明石潟浦路はれゆく朝なぎに霧にこぎ入る海士の釣船
明石がた松の木かげに道はあれど磯づたひして若め拾はむ
播磨潟明石のと浪月てりて夜舟うれしき旅にもあるかな
言のはの玉ひろはばや秋の夜の月もあかしの浦づたひして
酔臥せる友を残してただ一人淡路にわたる夕月夜かな
千鳥なく明石の浜に白き石あまた拾ひて人を待つかな
補録
舞子
落葉掻く松の木の間を立ち出でて淡路は近き秋の霧かも
明石
明石海峡は畿内と西国を往き来する通り路なので、船旅の歌が多く詠まれた。「明し」と掛詞になることから、月の名所としても多くの歌に詠まれている。
灯火の明石大門に入らむ日や榜ぎ別れなむ家のあたり見ず
明石潟潮干の道を明日よりは下笑ましけむ家近づけば
月影のさすにまかせて行く舟は明石の浦やとまりなるらん
有明の月もあかしの浦風に波ばかりこそよると見えしか
霧のまに明石の瀬戸に入りにけり浦の松風音にしるしも
ながめやる心のはてぞなかりける明石の沖にすめる月影
夜をこめて明石の瀬戸を漕ぎ出づればはるかに送るさを鹿の声
月さゆる明石の瀬戸に風ふけば氷のうへにたたむ白波
ともしびの明石の沖の友舟もゆく方たどる秋の夕暮
明石潟色なき人の袖を見よすずろに月も宿るものかは
明石潟かたぶく月もゆく舟もあかぬ眺めに島がくれつつ
明石潟あみ引くうヘに天の川淡路になびき雲の穂に歿る
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