佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州9 箱崎宮 ― 2017年02月25日
筥崎宮楼門(「敵国降伏」の匾額を掲げる)
箱崎宮
箱崎駅にあり。楼門に敵国降伏の勅願を掲ぐ。(注:福岡市東区箱崎。筥崎宮と書くのが正式という。また筥崎八幡宮とも。JR鹿児島本線箱崎駅の西南五百メートル程にある。応神天皇を主神とし、神功皇后・玉依姫命を合祀。かつては海に臨む松林の中にあった。)
いつしかも干潟を遠くあさり来て鳥居はるけき箱崎のはま
玉くしげふたたび三たびいくそたび見るともあかじ箱崎の浦
久方の月見草咲く箱崎の浜の松原をただ一人行く
箱崎のみやしろの前に神鳩と遊べる人を吾とおもはせ
補録
いく世にか語りつたへむ箱崎の松の千歳のひとつならねば
父の伴に幼くて筑前国に侍りて年経てのち、成順かの国になりて侍りければ、くだりてよめる
そのかみの人はのこらじ箱崎の松ばかりこそわれを知るらめ
はこざきや松吹く風にのこしけり波のほかまでなびくひびきを
筑前国筥崎宮のしるしの松をよみ侍りける
ちはやぶる神世にうゑし箱崎の松は久しきしるしなりけり
石清水みなそこ清き高嶺より影をうつすや箱崎の松
よひの間は松にくもりて箱崎や明方はるる浪の上の月
箱崎の松原の、いづれとなく神さびたるを見侍りて
一木にはいかにさだめし箱崎の松はいづれも神のしるしに
明けてこそ見むと思ひし筥崎の浪間にかすむ松のむら立
箱崎の松をならせる秋風に見しふるさとの月ぞもれくる
潮にしみ嵐にさびて黒む葉の松たのもしき筥崎の宮
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