佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州29 染川 ― 2017年05月10日
補録
染川
太宰府天満宮の南、光明禅寺の前を流れる小川。今は藍染川と呼ばれる。その名により染色の縁で恋歌に詠まれることが多い。歌枕「思ひ川」もこの染川と見る説がある。能「藍染川」のもととなった梅壺侍従の入水・蘇生伝説がある。
染川を渡らむ人のいかでかは色になるてふことのなからむ
女のもとにつかはしける
藤原真忠(後撰集)
筑紫なる思ひそめ川渡りなば水やまさらん淀む時なく
渡りてはあだになるてふ染川の心づくしになりもこそすれ
染川に宿かる波のはやければなき名立つとも今は恨みじ
庚申夜歌枕合 蛍、染川
源経信
いさりびの波間分くるに見ゆれども染川渡る蛍なりけり
河 秋
藤原家隆
山風のおろす紅葉のくれなゐをまたいくしほか染川の波
秋切恋
正徹
恋ひわびぬ秋も心をつくし路のあひそめ川に身をや捨てまし
太宰府にて
柳原白蓮
こゝも亦都恋しのおもひ川泪の跡を尋ねてぞ来し
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