新刊のお知らせ 二つの「竹の里歌」 ― 2017年04月06日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州24 水城 ― 2017年04月11日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州25 大宰府跡(都府楼跡) ― 2017年04月14日
補録
大宰府跡(都府楼跡)
大宰府は律令制において九州を統括した役所。「遠の朝廷」とも呼ばれた。市などの地名としては「太宰府」と書くが、歴史上の名称としては「大宰府」。都府楼は大宰府政庁の正殿。西鉄天神大牟田線都府楼前駅の西約一キロに政庁跡がある。
大君の遠の朝廷とあり通ふ島門を見れば神代し思ほゆ
ここにありて筑紫やいづち白雲のたなびく山のかたにしあるらし
(大宰帥を退任して帰京後、筑紫の沙弥満誓に贈った歌)
石ずゑは夏草の中に埋もれて麦の風ふく都府楼の跡
いにしへ の とほ の みかど の いしずゑ を くさ に かぞふる うつら うつら に
わびすみて きみ が みし とふ とふろう の いらか くだけて くさ に みだるる
大野山まぢかに曇り逝春の麦の畑は都府楼のあと
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州26 観世音寺 ― 2017年04月19日
観世音寺
天満宮の西五六町にあり。(注:福岡県太宰府市。日本有数の古刹で、かつては万葉歌人沙弥満誓が造筑紫観世音寺別当を務めた。日本最古とも言われる梵鐘(国宝)がある。大宰府に幽閉された菅原道真が「観世音寺には只に鐘の声を聴く」と詩に詠じたことでも名高い。西鉄太宰府線西鉄五条駅の北西五百メートル程。)
ぬかづきて何を祈りしいにしへの大弐の姫がかけたる願ひ
観世音寺みあかし暗う唯一人普門品よむ声にぬかづく
補録
沙弥満誓の綿を詠む歌一首 造筑紫観世音寺別当、俗姓笠朝臣麻呂也(万葉集)
しらぬひ筑紫の綿は身に付けていまだは着ねど暖けく見ゆ
彼の蒼然たる古鐘をあふぐ、ことしはまだはじめてなり
手を当てて鐘はたふとき冷たさに爪叩き聴く其のかそけきを
この かね の なり の ひびき を あさゆふ に きき て なげきし いにしへ の ひと
筑紫なる観世音寺の鐘の音を思ふしづけさ。歳のあしたに
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