新刊のお知らせ『校註 良寛歌集(補訂版)』 ― 2019年10月30日
Kindleにて大島花束校註の『校註 良寛歌集(補訂版)』の電子書籍を発売しました。660円です(unlimited 会員の方は無料)。
良寛の歌集は種々出ていて、吉野秀雄校注の東洋文庫は今も版を重ねているようです。大島花束の本は、歌数が多いのと、読みやすいこと(長歌は二句毎に改行するなど)が、類書と比べた時の良さでしょうか。注釈はややあっさりしすぎてはいるものの、枕詞などにも注を付けるなど、初心者に親切な方針が採られています。東洋文庫版を参照するなどして、明らかな誤植を訂正し、また補注を加えました。
良寛は特に長歌が良いと思うのですが、大島本では長歌の部が最初に置かれているのも、私の気に入っている点です。中でも物語的な歌が素晴らしく、私は「月の兎」などを読み返すたびに落涙してしまいます。散文にはない詩の力というものを強く感じさせられます。ここには「松山の鏡」と通称されている長歌を引いてみます。
越なるや 松の山べの
をとめごが 母に別れて
忍びずて 逢ひ見んことを
むらぎもの 心にもちて
あらたまの 年の三とせを
すぐせしが しはすの暮に
市に出で もの買ふ時に
ます鏡 手にとり見れば
わが面の 母に似たれば
母とじは ここにますかと
よろこびて います日のごと
言問ひて 有りの限りの
価もて 買うて返りて
朝なけに 見つつしぬぶと
聞くがともしさ
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