雲の記録20091114 ― 2009年11月14日
雲の記録20091115 ― 2009年11月15日
雲の記録20091116 ― 2009年11月16日
雲の記録20091118 ― 2009年11月18日
和漢朗詠集卷下 雲 ― 2009年11月20日
失題 作者不明
山遠雲埋行客跡 山遠くしては 雲行客の跡を埋む
松寒風破旅人夢 松寒くしては 風旅人の夢を破る
【通釈】旅人は山遠く去り、その跡をただ白雲が埋める。
松を吹く風は寒く、野に宿る旅人の夢を破る。
【補記】題も作者も知れない。和漢朗詠集の「雲」の部にあるが、原作は旅の詩であろう。前句後句、共に多くの和歌が本説取りしている。
【影響を受けた和歌の例】
越えわぶる山も幾重になりぬらむ分け行くあとをうづむ白雲(藤原頼実『新勅撰集』)
花にのみなほ分け入れば吉野山また跡うづむ峰のしら雲(宇都宮景綱『新千載集』)
心とはすみはてられぬ奥山にわがあとうづめ八重の白雲(藤原為基『風雅集』)
おのづから都にかよふ夢をさへ又おどろかす峰の松風(近衞基平『続拾遺集』)
三十路よりこの世の夢は破れけり松吹く風やよその夕暮(心敬『権大僧都心敬集』)
【参考】『平家物語』巻第三
山の方の覚束なさに、遥かに分き入り、嶺に攀ぢ、谷に下れども、白雲跡を埋んで、往き来の道もさだかならず。晴嵐夢を破つては、その面影も見えざりけり。
雲の記録20091120 ― 2009年11月20日
白氏文集卷十四 送王十八歸山寄題仙遊寺 ― 2009年11月21日
曾於太白峯前住
數到仙遊寺裏來
黒水澄時潭底出
白雲破處洞門開
林間煖酒燒紅葉
石上題詩掃緑苔
惆悵旧遊無復到
菊花時節羨君廻
【通釈】かつて太白峰の麓に住み、
しばしば仙遊寺まで出掛けて行ったものだ。
黒水が澄んでいる時は、
白雲のきれ目に、洞穴の門が開いていた。
林の中で、紅葉を焼いて酒を暖め、
石の上に、緑の苔を掃って詩をしるした。
嘆かわしいのは、あの旧遊の地を再び踏めないこと。
菊の咲くこの時節、山に帰る君が羨ましい。
【語釈】◇太白峰 長安西郊の山。◇仙遊寺 長安西郊にある寺。白居易は元和元年(806)地方事務官となった頃、この寺でしばしば遊んだ。◇黒水 渭水に流れ込む川。◇洞門 洞窟の入口。
【補記】山に帰棲する旧友の王十八すなわち
【影響を受けた和歌の例】
あかなくの色の千しほも染めなすや紅葉のもとの秋のさかづき(中院通村『後十輪院内府集』)
いつかまた酒あたためんこのもとの苔に色づく枝のもみぢ葉(松平定信『三草集』)
【参考】『平家物語』巻第六
残れる枝、散れる木の葉をば掻き集めて、風すさまじかりける朝なれば、縫殿の陣にて、酒煖めてたべける薪にこそしてげれ。(中略)天機殊に御快げに打ち笑ませ給ひて、「林間に酒を煖めて紅葉を焼くと云ふ詩の心をば、さればそれらには誰が教へけるぞや。優しうも、仕つたるものかな」。
『徒然草』五十四段
うれしと思ひて、ここかしこ遊びめぐりて、ありつる苔のむしろに竝みゐて、「いたうこそ困じにたれ。あはれ紅葉をたかん人もがな」。
千人万首に清水谷実業をアップ ― 2009年11月22日
千人万首に清水谷実業をアップしました。近世初期の公家歌人です。
三条西家の血をひきますが、西園寺家の一門清水谷家の養子になり、権大納言を勤めました。元禄の内裏歌壇に重きを置いた歌人で、どの歌も腕の冴えを見せ、唸らされるような作品ばかりです。千人万首に採らなかった歌より幾つか。
落花似雪
散りぬるを嵐の科になしてみん消えだに残れ花のしら雪
夏山
夕立の雲はふもとの峰こえて照る日かかやく雪の富士の嶺
白氏文集卷二十五 寄殷協律 ― 2009年11月22日
五歳優游同過日 五歳の
一朝消散似浮雲
琴詩酒伴皆抛我
雪月花時最憶君
幾度聽鷄歌白日
亦曾騎馬詠紅裙
呉娘暮雨蕭蕭曲
自別江南更不聞 江南に別れてより更に聞かず
【通釈】五年の間、君と過ごした楽しい日々は、
或る朝、浮雲のように消え散ってしまった。
琴を弾き、詩を詠み、酒を交わした友は、皆私のもとを去り、
雪・月・花の美しい折につけ、最も懐かしく思い出すのは君のことだ。
幾たび「黄鶏」の歌を聴き、「白日」の曲を歌ったろう。
馬にまたがり、紅衣を着た美人を詠じたこともあった。
呉娘の「暮雨蕭々」の曲は
江南に君と別れて以後、二度と聞いていない。
【語釈】◇五歳の優游 五年間楽しく遊んだこと。◇聽鷄歌白日 「黄鷄」を聴き、「白日」を歌う。「黄鷄」「白日」は詩人が杭州にいた頃聞いたという歌の曲名。◇呉娘 「呉姫」とする本も。呉二娘とも呼ばれた、江南の歌姫。「暮雨蕭蕭、郎不歸」(夕暮の雨が蕭々と降り、夫は帰らない)の詞を歌ったという。
【補記】江南の杭州を去った白居易が、杭州時代の部下であった協律郎(儀式の音楽を担当する官職)
【影響を受けた和歌の例】
いくとせのいく万代か君が代に雪月花のともを待ちけん(式子内親王『正治初度百首』)
白妙の色はひとつに身にしめど雪月花のをりふしは見つ(藤原定家『拾遺愚草員外』)
面影も絶えにし跡もうつり香も月雪花にのこる頃かな(土御門院『御集』)
よしやその月雪花の色もみなあだしうき世のなさけと思へば(伏見院『御集』)
入るを恨み消ゆるを惜しみうつろふを嘆くや同じ心なるらむ(加藤千蔭『うけらが花』)
夕月のかげもひとつにかすみつつ花につづける富士の白雪(松平定信『三草集』)
見れどあかぬ月雪花の三つあひにわが玉の緒は縒りや掛けまし(加納諸平『柿園詠草』)
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