佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線3 天の橋立 ― 2016年07月16日
安藤広重 天橋立図
天の橋立
新舞鶴より舟行して到るべし、宮津湾中に横れる沙嘴なり。松の下道の長く海に突き入ること廿八町南端は切戸の小海峡を隔て文殊と相対せり。(注:現在では京都丹後鉄道の天橋立駅が利用できる。)
なみたてる松のしづえをくもでにて霞みわたれる天の橋立
橋立や松ふきわたる浦風に入海とほくすめる月影
橋立の松の中道砂光るゆふべを来けりはつ夏の旅
松かさの落つる音して橋立の真白真砂路しづけくもあるか
鯵網を建て干す磯の夕なぎに天の橋立霧たなびけり
あかつきの欄にゐよれば久方のあまのはしだて神世の如し
補録
思ふことなくてぞ見まし与謝の海の天の橋だて都なりせば
大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立
舟とめて見れどもあかず松風に波よせかくる天の橋立
雲はらふ与謝の浦風さえくれて月ぞ夜わたる天のはしだて
浪の音に聞きつたへても思ふぞよふみ見ばいかに天の橋立
小雨はれみどりとあけの虹ながる与謝の細江の朝のさざ波
真白帆のはららに泛ける与謝の海や天の橋立ゆほびかに見ゆ
ひさかたの天の橋立ここに来てあはれとぞ思ふ小式部の歌
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