佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線5 応挙寺・船上山 ― 2016年08月03日
船上山 鳥取県東伯郡琴浦町(wikipediaより)
応挙寺
寺名を大乗寺といふ。香住駅より十町。寺の各室の襖画は皆応挙及その門弟の筆に成れり。
(大正二年四月)十九日、よべはおそく香住といふところにやどりて、応挙の大作をみむとつとめて大乗寺を訪ふ
菜の花をそびらに立てる低山は櫟がしたに雪はだらなり
船上山
赤碕駅より勝田川に沿うて到るべし。名和長年が後醍醐天皇を隠岐より迎へ奉りしところ。
忘れめやよるべも浪の荒磯を御船の上にとめし心は
此御歌は、元弘三年隠岐国よりしのびていでさせ給ひける時、源長年御むかへにまゐりて、舟上山といふ所へなしたてまつりけるほどの忠、ためしなかりし事など、しるしおかせましましけるもののおくに、かきそへさせ給ひけるとぞ。
船の上いでましの山の山おろしやしまの国を吹き響もすも
補録
応挙寺
いみじけれみろくの世までほろぶなき古き巨匠の丹青のあと
kindleの定額制読み放題、始まりました ― 2016年08月04日
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佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線9 大山 ― 2016年08月07日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線6 因幡山 ― 2016年08月09日
因幡国庁跡より因幡山を望む。
補録
因幡山
鳥取県鳥取市国府町の小山。稲羽山、稲葉山とも書く。国庁跡の東北。ただし在原行平の歌の「いなばの山」は固有名詞でなく「因幡の国の山」と見る説もあり、また『歌枕名寄』など中世の歌学書は美濃国の歌枕としている。
立ちわかれいなばの山の峰におふるまつとしきかば今かへりこむ
嶺の松も裾野の萩もなびききていなばの山はただ秋の風
忘れなむまつとな告げそ中々にいなばの山の峰の秋風
いかでかは待つともきかんはるばるといなばの山の峰の秋風
都人まつとしきかば言伝てよ独りいなばの嶺の嵐に
嵐ふく峰の霞のたちわかれいな葉の山の松ぞ見えゆく
峰に生ふる松吹きこしていなば山月の桂にかへる秋風
因幡国庁跡
鳥取市国府町。天平宝字三年(759)正月一日、因幡守であった大伴家持が因幡国庁で詠んだ一首は万葉集の巻末歌。
あらたしき年のはじめの初春のけふ降る雪のいやしけ吉言
ふる雪のいやしけ吉事ここにしてうたひあげけむ言ほぎの歌
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線7 鳥取砂丘 ― 2016年08月12日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線8 三朝 ― 2016年08月15日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線10 安養寺・米子 ― 2016年08月18日
米子城跡より米子市街と日本海を望む。
安養寺
日野川の鉄橋より上流十町あまりの左岸にあり。後醍醐天皇の皇女瓊子内親王の御墓あり。
元弘のはじめつかた、世の中みだりがはしく侍りしに、思ひわび、さまなどかへけるよしききて、瓊子内親王もとへ申しつかはしける
いかでなほわれもうき世をそむきなむ羨しきは墨染の袖
君は猶そむきなはてそとにかくに定めなき世の定めなければ
米子
中海に面して夜見半島の頭部を占む。法成寺に連理の松あり。
帯のよな米子の街と誰かいひし月になりゆく久米の城山
日本海に入日沈めばあかあかと裾野をかけて雲の峰映ゆ
大山の裾野よぎりて夕風は錦の海にさざなみたたす
補録
米子
天主台のぼりてみれば霧はれて波路はるかに隠岐のしまみゆ
あまたなるいか釣り舟の漁火は夜のうなばらにかがやきて見ゆ
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線11 夜見が浜・境 ― 2016年08月21日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線12 美保の関 ― 2016年08月25日
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線13 安来・中海 ― 2016年08月26日
中海 ©鳥取県
安来
中の海に臨む。
日本海の夕べはさびし燈台の灯も見えぬまで秋雨降れば
補録
中海
中の海とも。鳥取・島根県境にまたがる汽水湖。西にある宍道湖と大橋川によってつながっている。古くは「飫宇の海」と言った。
出雲守門部王の京を思ふ歌一首(万葉集)
飫宇の海の河原の千鳥汝が鳴けばわが佐保川の思ほゆらくに
門部王の恋の歌(万葉集)
飫宇の海の潮干の潟の片思ひに思ひや行かむ道の長手を
讃岐守安宿王等、出雲掾安宿奈杼麻呂の家に集ひて宴する歌(万葉集)
おほきみの命かしこみ於保の浦をそがひに見つつ都へのぼる
(注:「於保の浦」(原文「於保乃宇良」)が出雲国庁近くの浦であるとすれば、現在の中海の一部にあたるかと推測される。)
おうの海にしのまの海人のかづくてふ風のかがみの堪へがたの世や
飫宇の海の その川千鳥 千世と祝ぎ 八千世と祝ぎて 今日もかも 円居すらしも ことほがひ 酒ほがひして 今もかも 宴すらしも 玉松の はしき島山 ゆきめぐる 月日も知らに 宴すらしも
国引きの遠き昔をまのあたり見る心地するそりこ舟哉
「そりこ舟」は中海で使われていた独特の刳舟。舳先が極度に反り返っているためこの名がある。
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