佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州1 門司 ― 2017年02月07日
門司
関門海峡の南岸にあり。往古文字の関ありき。本土より行く九州の門戸なり。(注:福岡県北九州市門司区)
どんよりと師走の空のうすぐもり人なだれあがる門司の桟橋
秋の夜の桟橋通一列のくだもの店の灯の強さかな
船の灯も今宵ちらほら物さびし門司の港の五月の闇に
門司の海汐さゐさやに聞ゆれど夕なぎ時の風もあらなく
紫の霞わけこしおほぶねや浮標うちゆらぐ汐早き門司
補録
もじの関すぐるに、関屋に人の見えざりければよめる
ゆき過ぐる心はもじの関屋よりとどめぬさへぞかきみだりける
女のがりつかはしける
藤原顕輔(金葉集)
恋すてふもじの関守いくたびか我は来つらむ心づくしに
月の影つめる重荷の筑紫舟とどめてをみよもじの関守
玉づさも都へ行かばことづてむ文字の関路をかへる雁がね
春秋の雲ゐの雁もとどまらず誰が玉づさのもじの関守
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