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雲の記録201001072010年01月07日

2010年1月7日午後5時鎌倉市二階堂にて
日の暮れかかる頃に杉林のある谷間で安雄と正次郎の声が聞こえて来る。「もう夕御飯なのにいつまで遊んでいる気だ」と腹を立てながら、大浦は二人を呼びに行く。そんな時、彼はつい立ち止って、景色に見入った。
「ここにこんな谷間があって、日の暮れかかる頃はいつまでも子供たちが帰らないで、声ばかり聞えて来たことを、先でどんな風に思い出すだろうか」
すると、彼の目の前で暗くなりかけてゆく谷間がいったい現実のものなのか、もうこの世には無いものを思い出そうとした時に彼の心に浮ぶ幻の景色なのか、分らなくなるのだった。――庄野潤三『夕べの雲』より