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白氏文集卷五十六 對酒五首 其二2010年07月31日

カタツムリ

酒に対す 其の二 白居易

蝸牛角上爭何事  蝸牛(くわぎう)(つの)の上に何事か争ふ
石火光中寄此身  石火(せつか)の光の(うち)に此の身を寄せたり
隨富隨貧且歡樂  ()(したが)(ひん)に隨ひ(しばら)く歓楽せよ
不開口笑是癡人  口を(ひら)きて笑はざるは()癡人(ちじん)なり

【通釈】かたつむりの角の上のように狭い世間で何を争うのか。
火打石が発する光のように一瞬だけこの世に身を寄せているのに。
富む人は富むなりに、貧しい人は貧しいなりに、とまれ酒を飲んで楽しもう。
大口開けて笑えないのは馬鹿者だ。

【語釈】◇蝸牛角上 荘子則陽篇の寓言――蝸牛の左右の角の上にある国(触氏・蛮氏)が領土を争って多くの死者を出した――を踏まえる。ことわざ「蝸牛角上の争い」は直接的には掲出詩を出典とする。◇石火光 火打石を打つ時に出る光。きわめて短い時間の譬え。

【補記】「對酒」五首より。首聯が和漢朗詠集巻下雑「無常」に引かれている。「無常」「寄火無常」などの題で詠まれた歌に「石火光中寄此身」の句を踏まえたと見られる例がある。但し人生の短さを「石火」に譬えた例は漢籍に古くから見える。

【影響を受けた和歌の例】
石をうつ光の中によそふなりこの身の程をなに歎くらん(藤原俊成『長秋詠藻』)
石の火にこの身をよせて世の中の常ならずさを思ひ知るかな(越前『千五百番歌合』)
はかなしや見る程もなき石の火の光のうちによする此の身は(花山院師兼『師兼千首』)

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