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桐葉風涼欲夜天2010年08月14日

桐の葉

白氏文集卷五十五 秘省後廳
秘省(ひしやう)後聴(こうちやう) 白居易

槐花雨潤新秋地  槐花(くわいくわ)雨に(うるほ)新秋(しんしう)の地
桐葉風翻欲夜天  桐葉(とうえふ)風に(ひるがへ)る 夜ならんとする天
盡日後廳無一事  尽日(じんじつ)後庁(こうちやう)一事(いちじ)無く
白頭老監枕書眠  白頭(はくたう)老監(らうかん)書を枕にして眠る

【通釈】(えんじゅ)の花が雨にみずみずしく湿る、早秋の地。
桐の葉が風に踊り飛ぶ、暮れようとする空の下。
終日、後方の政庁では忙しい仕事の一つも無く、
白髪頭の老秘書監は、書物を枕にして昼寝する。

【語釈】◇槐花 エンジュの花。夏に黄白色の花をつける。宮中に好んで植えられた。◇桐葉 桐の葉はいちはやく落葉して秋を告げるものとされた。◇老監 老いた秘書監。

【補記】太和元年(827)秋、長安で秘書監を勤めていた時の作。作者五十六歳。和漢朗詠集巻上秋「早秋」の部に「槐花雨潤新秋地 桐葉風欲夜天」が引かれ、「桐葉風欲夜天」を踏まえたと思われる和歌が幾つか見られる。

【影響を受けた和歌の例】
桐の葉のうらふく風の夕まぐれそそや身にしむ秋は来にけり(藤原定家『拾遺愚草員外』)
日はくもる桐の葉がくれ秋やときさよ風涼しねやの手枕(得業信広『正治初度百首』)
秋をあさみまだ色づかぬ桐の葉に風ぞ涼しき暮れかかるほど(阿覚『御室五十首』)
夕露はおきあへぬまにかつ散りて桐の葉すずし秋の初風(惟宗光吉『光吉集』)