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千人万首 三条西実隆 六2013年03月09日

窓落葉

はらはぬも心づからのもみぢ葉に知れかし窓のふかき思ひを(雪玉集1574)

「窓に積もった紅葉を払わずにいるのも、私の心からである。そのことに、奧の室内深く、ひどく鬱いで過ごす私の思いを知っておくれよ」という意であろう。

 永正元年(一五〇四)閏三月、御月次会での作。「窓のふかき思ひ」と言うと深窓の佳人の艶情の如くでもあるが、当時の実隆の心境からして、上のように解してみた。世相の混乱と不安をよそに、『延喜式』などの書写に励んでいた頃である。

内裏御屏風色紙御歌

おのづからおつる枯葉の下よりはさびしくもあらぬ木がらしの庭(雪玉集8129)

「ひとりでに落ちる枯葉の下にいるよりは、いっそ寂しく感じないですむ、木枯し吹く庭よ」という意。

 烈風が枯葉も感傷も吹き飛ばしてくれると言うのであろう。字余りの第四句「さびしくもあらぬ」が得も言われぬ味わいを出している。内裏の御屏風色紙のために詠進した歌。

湖水鳥

ささらなみ夢のまなくも水鳥のにほのうき寝やわびて啼くらん(雪玉集1658)

「鳰のうみのさざ波に揺られ、夢を見る暇もなく、水鳥のかいつぶりは浮き寝を辛がって啼くのだろうか」の意。

 本歌は「かきくもり雨ふる河のささら波まなくも人の恋ひらるるかな」(拾遺集・恋五・九五六、人麿)。恋から季(冬)へ転じた。水鳥の辛い浮き寝が主題であるが、初句から第四句までの波に揺られるような、たゆたう調べが美しい。

「ささらなみ」は細波さざなみ。「夢のまなくも」は夢見る暇も無く。「鳰」はかいつぶり。また琵琶湖の古称「鳰の湖」を匂わせる語。「うき寝」は「浮き寝」「憂き寝」の掛詞。

 大永三年(一五二三)十一月廿五日の日付がある作。

ささのやの真屋にしられて夜の夢さめぬうちよりきく霰かな(雪玉集1668)

「笹葺きの切妻屋根に響く音にそれと知られて、夜の夢が醒めぬうちから霰を聞くことよ」との意。

 屋根に弾ける霰の音が、夢うつつのうちから聞こえていた。物寂しい寒夜の寝覚めが思い遣られる。

「ささのや」は笹葺きの屋。「真屋」は棟の前後二方へ葺き下ろしにした家、またその屋根。切妻屋根。