佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』東海道線2 川崎・横浜 ― 2015年02月13日
川崎
東南二十町に川崎大師あり。
六郷の河原に淡き夢を見る月見草などうらがなしけれ
厄よけに大師詣での帰り道おちゐし胸によき富士を見つ
横浜
横浜に錨おろせるペルリにかはりてよめる
武蔵の海さしいづる月は天飛ぶやかりほるにやに残る影かも
○
船の燈がさぎりの中に語らへる湊の夜こそなまめかしけれ
秋近し野毛山の鐘夜を呼びて港の町はいま燈ともりぬ
三渓園
本牧にあり、原氏の庭園。
渓水の清き岩間ゆさしいづる一枝の梅にまづ春はきぬ
風鐸のひゞく松かげ些かのうれひにつかれ夕月をみぬ
べに芙蓉すがためでたく咲き出でて横笛庵に初秋は来ぬ
丘の上は風たつらしも塔の風鐸の音をわたどのに聞く
まろき山のあららぎ見ればはしけやし大和を思ひ心ときめく
杉田梅林
本牧より浦つゞきにて一里あまりのところ。
朝の風丘びの梅のうれ吹けば梅が香遠く海にかをりぬ
補録
横浜
武蔵の橘の浦にて
安藤野雁
春の色の海よりのぼるかげろふに半ばそめたる安房の浦なみ
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