佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』山陰線25 隠岐 ― 2016年11月05日
隠岐 国賀海岸
隠岐
出雲の正北海中にあり。
我こそは新島守よ隠岐の海のあらき浪風心して吹け
木枯の隠岐の杣山吹きしをり荒くしをれてもの思ふころ
補録
隠岐の国に流されける時に、舟にのりて出で立つとて、京なる人のもとにつかはしける
わたのはら八十島かけて漕ぎ出でぬと人にはつげよ海人の釣舟
わたつうみの浪の花をば染めかねて八十島とほく雲ぞ時雨る
承久三年七月以後、遠所へ読みて奉り侍りし時
寝覚してきかぬを聞きてかなしきは荒磯波の暁のこゑ
遠所にて御歌合侍りしに、山家
さびしさはまだ見ぬ島の山里を思ひやるにもすむ心ちして
わたの原八十島かけてしるべせよ遥かにかよふおきの釣舟
浦々によする白浪言問はむおきのことこそ聞かまほしけれ
心ざすかたを問はばや浪の上に浮きてただよふ海士のつり舟
思ひやる波路かなしき隠岐の海の昔もとほくかすむ月かげ
隠岐の海のあらき浪風しづかにて都の南宮つくりせり
ほの青く浮びたりけれ指ざして今日も悲しき大君の隠岐
島山の太き腹部を一刀に断落としたるごとき垂直
渡り来し隠岐西之島船着に黒き牛たつ影ともなひて
中興を成したまひたる御心に泪溢れぬ海輝けば
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