佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』九州31 朝倉 ― 2017年06月04日
福岡県朝倉市 恵蘇八幡宮
補録
朝倉
福岡県朝倉市。斉明天皇が新羅征討の際筑前国に設けた朝倉橘広庭宮の所在地。日本書紀によれば斉明天皇はこの宮で崩御したが、その葬列を朝倉山の上から鬼が見守っていたという。新古今集などに天智天皇の作とする「朝倉や木の丸殿にわがをれば…」は、もとは神楽歌で、この「朝倉」が筑前の朝倉であるとの確証は無いが、後世、筑前国の歌枕として定着した。朝倉市山田字恵蘇宿の恵蘇八幡宮を木の丸殿の旧蹟とする伝えがあるという。なお朝倉山は朝倉市鳥屋山の南の山とされる。
朝倉や木の丸殿に我がをれば名のりをしつつ行くは誰が子ぞ
故筑前守の子の親範の朝臣の来て、歌よみ物がたりなどするに、あはれなれば
君みれば朝倉山にかくれにし人に我こそ逢ふここちすれ
(亡くなった筑前守源道済の子に会って、故人を追懐した歌)
昔見し人をぞ我はよそに見し朝倉山の雲井はるかに
ほととぎす朝倉山のあけぼのに問ふ人もなき名乗りすらしも
よそに見ていくよになりぬ久方や朝倉山の雲間もる月
思ひ出でよ朝倉山の峰の月よそなる雲にかげは絶ゆらん
朝倉や木の丸殿にすむ月の光は名のる心ちこそすれ
朝倉の夕山こえてよその瀬にうつろふ虹のかげをみるかな
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