雲の記録20091101 ― 2009年11月01日
雲の記録20091102 ― 2009年11月02日
雲の記録20091103 ― 2009年11月03日
白氏文集卷十四 禁中夜作書、與元九 ― 2009年11月04日
禁中にて夜書を作き、元九に与ふ 白居易
心緒萬端書兩紙 心緒万端 両紙に書き
欲封重讀意遲遲 封ぜんと欲て 重ねて読み 意遅遅たり
五聲宮漏初鳴後 五声の宮漏 初めて鳴る後
一點窗燈欲滅時 一点の窓灯 滅えなんと欲る時
【通釈】思いのたけを紙二枚にしたため、
封をしようとしては読み返し、心はためらう。
五更を告げる水時計が鳴り始めたばかりの頃
一点の窓のともし火が今にも消えようとする時。
【語釈】◇五聲 五更(午前三時~五時頃)を告げる音。◇宮漏 宮殿の水時計。
【補記】左拾遺として宮中に仕えていた三十八、九歳頃、湖北省江陵に左遷されていた親友の元九(元稹)のもとへ贈った詩。手紙の内容は言わず、友への思いはしみじみと伝わる。第三・四句が和漢朗詠集の巻下「暁」の部に採られている。但し「初鳴後」が「初明後」となっており、普通「初めて明けて後」と訓まれる。
【影響を受けた和歌の例】
これのみとともなふ影もさ夜ふけて光ぞうすき窓のともし火(道助親王『新勅撰集』)
つくづくと明けゆく窓のともし火のありやとばかりとふ人もなし(藤原定家『玉葉集』)
雲の記録20091104 ― 2009年11月04日
千人万首に山本春正をアップ ― 2009年11月07日
木下長嘯子の高弟の一人で、長嘯子の歌文集『挙白集』を完成させた中心人物。また、水戸光圀の命になる、地下(じげ。宮廷に地位を持たない階層)の歌人の作を集成した歌集『正木のかづら』の編纂者でもあり、近世地下歌壇では重きを置かれる人物です。今では歌人としてよりも、代々継がれた蒔絵師としての名が知られているでしょう。華麗で装飾的な蒔絵は「春正塗」「春正蒔絵」と呼ばれ、尊ばれています。
活字になった限りの歌は読んでみて、さほどの秀歌を見出すことはできませんでしたが、やはり長嘯子の一番弟子、相当の力倆がうかがえます。
『正木のかづら』(木下長嘯子全集第四巻に翻刻されています)収録歌より幾つか引いてみましょう。
久方の空みつやまともろこしをおしなべて立つ春霞かな
かつ氷りかつはたばしる霰かな月すむ河の波の白玉
契りおきて限りあるべき道にだに遅れしものをきぬぎぬの空
須磨の浦や藻塩たれけむ昔まで煙にのこる夕暮の空
雲の記録20091109 ― 2009年11月09日
白氏文集卷十五 燕子樓 ― 2009年11月11日
燕子楼 白居易
滿窗明月滿簾霜 満窓の明月、満簾の霜
被冷燈殘払臥床 被は冷やかに、燈は残れて臥床を払ふ
燕子樓中霜月夜 燕子楼の中の霜月の夜
秋來只爲一人長 秋来つて只一人の為に長し
【通釈】窓いっぱいに輝く月、簾いちめんに降りた霜。
掛布は冷ややかで、燈火は寝床をうすく照らしている。
燕子楼の中で過ごす、霜のように冴えた月の夜は、
秋になって以来、ただ私ひとりのために長い。
【語釈】◇燕子樓 徐州の長官、張氏の邸内の小楼。張氏の愛妓眄眄が、張氏の死後十余年ここに住んで独身を守った。楼の名は二夫を持たないという燕に因む。◇只爲一人長 自分にとってだけ長いのかと嘆く心。夫を失った独り身ゆえに、夜が一層長く感じられる。
【補記】「燕子楼」三首の一。燕子楼に孤閨を守る女性の身になって作った詩。楼に愛妓を囲っていた張氏は作者と旧知の間柄であり、実話に基づく詩である。和漢朗詠集の「秋夜」に第三・四句が採られている。
【影響を受けた和歌の例】
月みれば千々に物こそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど(大江千里『古今集』)
ひとりぬる山鳥の尾のしだり尾に霜おきまよふ床の月影(藤原定家『新古今集』)
ひとりのみ月と霜とにおきゐつつやがて我が世もふけやしにけむ(藤原良経『新続古今集』)
【参考】『狭衣物語』巻四
文のけしきなども、ただおほかたに思はせたるなつかしさをば、おろかならぬさまに言ひなさせ給へるさまなども、さし向かひ聞こえさせたる心地のみせさせ給ひて、いとど御とのごもるべうもなければ、「燕子楼の中」とひとりごたれ給ひつつ、丑四つと申すまでになりにけり。
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