雲の記録200912052009年12月05日

2009年12月5日鎌倉市二階堂にて

朝焼け。このあと、鱗雲の見える美しい空となるが、昼頃には雲が多くなり、間もなく雨が降り始めた。

論語 雍也編二十三2009年12月05日

知者樂水

子曰、知者樂水、仁者 子の曰はく、知者は水を楽しみ、仁者は
樂山、知者動、仁者静、山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。
知者樂、仁者壽。   知者は楽しみ、仁者は寿(いのちなが)し。

【通釈】先生が言われた、「智の人は(絶えず動く)水を楽しみ、仁の人は(不動の)山を楽しむ。智の人は動き、仁の人は静かである。智の人は生を楽しみ、仁の人は生を久しうする」。

【語釈】◇知者 道理を知る人。雍也編に孔子の曰く、「民の義を務め、鬼神を敬して遠ざく、知と謂ふべし」。◇仁者 仁徳をそなえた人。顔淵編に「仁」を問われて孔子の曰く、「人を愛す」。また雍也編に曰く、「仁者は(かた)きを先にして()るを(のち)にす。仁と謂ふべし」。◇壽 命が長い。

【補記】知者と仁者をくらべ、それぞれ水(川)と山、動と静、楽(一時の快楽)と寿(永続的な幸福)によって対比した。論語には他にも知者・仁者を対比した教えが見え、たとえば顔淵編には仁者を問われ「人を愛す」、知者を問われ「人を知る」。里仁編には「仁者は仁に安んじ、知者は仁を利とす」(仁の人は仁に満ち足りている、智の人は仁を利用する)。また子罕編には「知者は惑はず、仁者は憂へず、勇者は(おそ)れず」。

【影響を受けた和歌の例】
み吉野の 吉野の宮は 山柄(やまから)し (たふと)くあらし 川柄(かはから)し (さや)けくあらし 天地(あめつち)と 長く久しく 万代(よろづよ)に 変らずあらむ 行幸(いでまし)の宮(大伴旅人『万葉集』)
山を我がたのしむ身にはあらねどもただ静けさをたよりにぞ住む(細川幽斎『衆妙集』)
注:旅人詠の「山柄し 貴くあらし 川柄し 清けくあらし」の対句について「知者樂水、仁者樂山」からの影響を指摘する説がある。幽斎の歌は題「閑居」、晩年、京都吉田山麓に隠棲していた頃の作と思われる。